「確かに私は、忙しさや寂しさで何度もあなたに
八つ当たりもしたわ。でも、それは……
景ちゃんを嫌いだった訳じゃない。
ただ寂しかったの。大切にされていると分かっていても
人目を気にして普通の家庭がすることが出来なかったから」

「ただ忙しいストレスと寂しくて
あなたに甘えてしまったの。
でも離れて分かったわ。
私も梨々花もあなたが必要なのよ。あなたは、
梨々花の父親だもの。あの子のためにも……
私達やり直しましょう」

天宮麻梨子の言葉を聞いて明らかに動揺する課長。
そして悲しい表情をする。

しかし、その表情は……後悔でもあり
愛おしそうな表情でもあった。

「今さら……遅いだろ」

「遅くなんかないわ!!
あなたが……梨々花を大切にしているなら
もう一度夫婦に戻れるわ。
情でもいいの……梨々花もそれを望んでいる」

「私は、景ちゃんが好き。
今も昔も……あなたしか考えられないの」
そう言うと泣きながら課長に抱きついてきた。

私は、それを……黙って見ていた。

そして絶望した。

天宮麻梨子は……復縁を希望していた。
娘の梨々花ちゃんのためだと言いながらも
心の底から課長を愛しているのだろう。

「麻梨子……」
課長も……動揺をして身動きがとれていなかった。
明らかに迷っている。