「しばらくはこの状態でしょうから、サンドイッチを食べたくなったらいつでも声をかけてね」


カフェを出て歩いていると、室長が気遣って言ってくれる。これはそのうち室長と高瀬くんの2人にちゃんとお礼をしなければならないと思った。ーー例えば何かご馳走するとか。
もし仮にそういう提案をしたら、染谷くんは協力してくれるだろうか。それとも、嫌がられてしまうだろうか。不安と期待が入り混じった、もやもやとした感情に支配されながら会社へ戻った。


所属部署の入口まで来ると、ひとりの女性が佇んでいた。私たちの靴音に顔を上げた彼女と目が合う。


「松井さん」


私の名前を呼ぶ仲川さんの顔にはいつもの柔和な表情はなく、強ばっていた。私の方へ、一歩踏み出す。


「あの、少しお時間いいでしょうか」


いいでしょうかと尋ねながらもどこか断れない雰囲気に、胸の鼓動が速くなっていく。室長はそんな私の肩をポンと叩いて言った。


「休憩ルームの奥、使ったら? 少し遅れても構わないから」

「はい……」


人目に付くと良くないという判断だろう。私は室長に軽く頭を下げると、仲川さんと一緒に休憩ルームへ向かった。