「高瀬……」

「松井、どうしたんだよその顔」


高瀬くんが私たちの方へ歩いてくる。私を見ると顔をしかめて、染谷くんの方へ向いた。


「染谷が泣かせたのか?」

「こ、これは違うの、私が勝手に」


このままだと高瀬くんに誤解されてしまうと思い、必死に首を振る。どう言ったらいいのか考えているうちに、染谷くんが立ち上がってそのまま高瀬くんの前に立った。


「高瀬、松井のことちゃんと大事にしろよ」

「は? 何だよ急に」

「久しぶりに見たら松井の顔色が悪くて驚いた。……無理させてないよな?」


本当に、高瀬くんは何ていうときに入ってきてしまったのだろう。
完全に勘違いした状態の染谷くんが、何も知らない高瀬くんに睨みつけたので、私は慌てて染谷くんの腕を引っ張った。


「染谷くん、待って! 違うんだって!」

「ーー松井は少し黙ってて」


苛立ったように言うと、染谷くんはくるんと私の腰に手を回して、自分の方へ引き寄せる。今度は染谷くんに背を向けるようにして再び腕の中に収まった私は、伝わる体温に声を上げそうになった。