「……私も、好き」

「え?」


一瞬動きを止めた染谷くんは、目を見開いて私を見る。


「私も、染谷くんのことがっ」

「松井、いいよ。そういう優しさは、みじめになるだけだからさ」


伝わって欲しかった私の言葉は響かなかったようで、逆に染谷くんを拒絶させてしまった。どういう言い方をすれば、その勘違いに気付いてもらえるのだろう。そもそも、染谷くんは一体誰を私の彼氏だと思っているのだろう。止まっていた涙が復活したようで、潤んできた目元をごしごしと擦る。


「あいつは優しくしてくれてる?」

「あいつ、って……?」


全く心当たりがなく聞き返すと、言わせるなよ、とため息を吐かれた。


「高瀬のことだよ……彼氏だろ?」


その名前を聞いて、初めて染谷くんが、私と高瀬くんが付き合っていると思っていることを知った。慌てて否定しようとしたとき、キイ、と金属の音が聞こえた。


「ーー俺が何だって?」


私も染谷くんも、ほぼ同時に声がする方へ振り向いた。

高瀬くんが立っていた。