「ごめん、急にこんな話。……って松井?!」


染谷くんが顔を上げた気配がしたけれど、私はそっちを見ることができなかった。


「ーー何で松井が泣くんだよ」


本当に私は、いつも間が悪い。

仲川さんの思いを考えると、苦しくて息ができなくなってしまった。どこか私の気持ちとリンクしているようで。


ほら、と渡されたポケットティッシュで目頭を押さえていると、いつもの優しい声がした。


「実は俺、告白しようと思ってた」


鉛のような黒くて重いものに心が支配されていく。染谷くんがどんどん遠くなっていくのが寂しい。私はこのまま、好きでいてもいいのだろうか。


「でも、仲川のことがあって。まるで自分を見ているようだって思った。俺も、その人を困らせるってわかってるから」


染谷くんが、こんなに悩んでいることが不思議だ。染谷くんは仕事もできるし人望もあるのに、どうして。


「……彼氏がいるからな、その人」


私の心の中の声がわかったのか、ぽつりと言う。染谷くんがそんなに苦しい恋をしていただなんて、思ってもいなかった。


「……そう思って諦めようとしたんだけど、今朝会ったら相変わらず具合悪そうだし、無理ばっかりするし。俺、もう限界」


(今朝、会ったって……)


私の他に誰かに会ったのかどうかはわからないけれど、まるで私のことを言っているかのように錯覚してしまう。そんなはずはないときゅっと唇を噛んだ。そもそも私には彼氏はいないから、別の人だというのに。