そんな打ちひしがれている私に気付くはずもなく、染谷くんは、言いにくそうに口を開いた。


「……好きな人がいるって言ったら、また泣かせちゃってさ」


重苦しい空気がまとわりついて、照明さえ暗くしてしまいそうだ。こんなときに自販機の機械音が止んでしまい、静寂が私たちを包む。

仲川さんは普段から染谷くんの近くで仕事をしているというのに、運命は時に残酷だ。

そして、染谷くんの発言が動揺させたのは仲川さんだけではない。


(やっぱり、染谷くんには好きな人がいるんだ……)


仲川さんではないとしたら、社外の人かもしれない。染谷くんならきっと選び放題だろうけれど、就職してから誰とも付き合っていないという話を思い出した。


ずっと、誰かに片思いをしている。