改めて彼に尊敬の念を抱き浸っていた私は、今置かれている状況にハッとして我に返った。


「あっ! そう言えば染谷くんはここに休憩しに来たんだよね? ごめん、私邪魔しちゃった!」


つい長居をしてしまった。慌てた私がいそいそと部屋から出て行こうとすると、ぐっと腕をつかまれて止められる。


「いや、松井を迎えに来たんだけど」

「へっ?!」


(ーー私を、迎えに? それって……)


私が理由を尋ねるよりも早く、染谷くんの弾んだ声が響いた。


「ーー無事に繁忙期を抜けられたから、しばらくゆっくりできそうなんだ」


そう言って心底安心したように微笑んだ。久しぶりに、染谷くんは心からの笑顔を見せてくれていると感じたほどだ。


「松井のところに行ったら、ここにいるって聞いてさ。ーーあ、それで、今日この後なんだけど……大丈夫?」


彼の言う〝大丈夫〟とは、〝一緒に過ごせるか〟という意味だと理解すると、カーッと頬が熱くなった。


「うん、もちろん! 私まだバッグを席に置いてるから、取ってくるね」

「分かった。会社の外で待ってる」