「ーーええっ?!」


思わず大きな声を上げた私の顔を見て、高瀬くんは更に笑みを深くする。あまりこういうことは言いたくないが、邪悪な笑顔だ。


「うちの部にいる染谷ファンが言ってたから間違いない。……誕生日の次の日から毎日って、もう3日も経ってるんですけど」

「……」


高瀬くんは、時に意地悪だ。
こうして私は、飲み物も買えないまま厳しい追及を受けている。


「染谷ってさ、松井と付き合い出してから楽しそうだよな」

「そう、かな?」

「絶対そうだって。じゃなきゃあんな」

「高瀬」


何かを言いかけた高瀬くんの肩が不意に叩かれる。誰に声をかけられたのかを瞬時に理解したようで、高瀬くんの眉毛がぴくんと動いた。


「近いから」


ぐいっとそのまま高瀬くんの肩が引っ張られて、私との距離が開いた。


「染谷くん!」


見慣れないむっとした表情に、思わずたじろいだ。高瀬くんは両手を上げて、わざとらしく降参のポーズを取る。


「ハイハイ。いくら何でも松井に手え出したりしないから心配するなよ」

「高瀬くん何言って……!」


火に油を注ぐような発言をした高瀬くんに文句を言おうと一歩踏み出す。高瀬くんは完全に面白がってからかっているだけなのだ。


「ーーどうだか」


言いかけた私の声など聞こえていないように、染谷くんはぼそっと吐き捨てるように呟いた。彼の横顔は、無表情そのものだ。


(どうしよう……染谷くん怒ってる?)


何とか染谷くんに声をかけようとしたが、それよりも早く高瀬くんが私に目配せをしながら話しかけてきた。