(良かった。無事に買えて)


電車に乗って帰路につく。肩にかけている通勤用バッグの中からは、白いリボンのかかった深緑色の包みが顔を覗かせていた。既に辺りは暗いため、目の前の窓ガラスにそれがはっきり映っていることに気付く。さっき慌てて店から出てきたからだと反省し、私はプレゼントをバッグの中へしまい直した。


(あとは渡すだけ、なんだけど。……無事に渡せるのかな)


本当はいつものお礼も兼ねてご飯に誘いたいところだ。しかし、今はちょうど社内の締め時期と重なっているため、ここ最近の営業部はとても忙しいらしい。

この前も、もらったメールに残業していることや休日出勤していることが書かれてあった。……つまりそれは、裏を返せば〝しばらくは自由な時間がない〟という意味が含まれている訳で。


(当日のお昼休みに、営業部の所まで渡しに行こう)


染谷くんの手を煩わせる訳にはいかない。そのため、前もって連絡はせずにプレゼントを渡したらすぐに退散しようと決めた。


(それに……いらなければ返してもらえばいいし……)


段々自信のなくなってきた私は、ため息を吐きながら電車に揺られるのだった。