教室の端に付けられた四角いスピーカーからショートホームルームの開始を知らせるチャイムが鳴り響く。ガラガラと音を立てて教室の前のドアが元気よくスライドされ、担任の先生であろう人物が颯爽と現れた。
「おはよう!」
手に持っていた名簿を机にポンっと起き、私たちに笑いかける。
「今日から担任になりました、向井真美子です。一年間よろしくね!では、さっそくですが出席を取ります。」
美佳の隣を見ると真中くんの席は、ガランとしてる。まさか、初日から遅刻?大丈夫かな。
「内原悠人くん。」
「はい。」
「遠藤壮介くん」
「はーい。」

「そんなに気になんの?真中のこと。」
ずっと真中くんの席を眺めてたら、悠人が意地悪するように静かに話し掛けてきた。
「別に。」
「さっきから、あいつの机眺めてんじゃん。」
「なんで、そういうこと言うの?あたしはただ、まだ来てないから、初日から遅刻なんて凄いなって思ってただけだよ。」
「ふぅ〜ん。」
今日の悠人は何かと気に障る。
「…中敬くん。」
先生の声がフェードインしてくる。
「真中敬くん。」
教室中の視線が、彼の席へと集中した。
「あれ?真中くんはまだ来てないのかな?誰か知ってる人いない?」
その時、後ろのドアが勢い良く開いた。
「はいはいはーい!真中、いますっ!!」
そこには元気よく手を上げて、先生に自分の存在をアピールする男の子がいた。
「ちょっと真中くん初日から遅刻ー?」
「いやいや。違いますよ〜。朝練押しちゃって!」
「もう、今回だけだからね?」
「すいません。」
「空いてる席が君の席だから。」
「ありがとうございまーす!」
焼けた黒い肌から白い歯がチラッと見えた。
この子が真中敬くん。