名前のない物語






風船の中にいた彼女は聞こえてきた音楽に目を開きました。


そして外にいる青年の姿を見つけます。



彼女は驚きました。なぜ彼がここにいるのかと。


彼女は彼を知っていました。


彼は時折町に来ては愉快な音楽を皆に聞かせていた人気者だったのです。


彼女は恐れました。


彼はきっと自分を「うそつき」と呼ぶに違いない。



彼女がそう思った瞬間、大きかった風船は更に大きくなりました。