7時05分。バス停で、友達とバスを待つ。
胸まである髪の毛を二つに分けて結んで、まだなれない制服に身を包み一呼吸する。
「はふぅ…。さとみまだかなぁ。バスきちゃう…」と不安になりひとりでつぶやく。
でも、半分だけあの先生に会える楽しみに胸が踊る。
「未来、おはよう〜!」ポニーテールで走ってくるさとみは、私の自慢の友達である。「おはよう〜、さとみ。」
「あっ、バス来た〜、もう少しで置いてかれちゃうところだったね」
えへへと笑った時にできるえくぼは、さとみのチャームポイントであり、私はその笑顔のおかげで学校生活に感じていた不安が少しだけ和らいだ。

私の家から、学校まではバスで40分。
そして、今日から私が通う学校の名前は城北高校。しろほくなんて、響きが可愛い。

バスにいるあいだは、さとみの話をきいて笑ったりどんな高校生になりたいかを話していた。そして、そうこうしている間に学校についた。
「同じクラスだといいね。」
さとみが言う。私もだよ、と返す。
手をつないで、人混みをかき分けて思っていたよりも小さいクラス表を見る。
A組みから順にー…
「橋本・・橋本・・」
真ん中から数えても、見つからない。
B組を見ても名前はない。
となりではさとみが「私、B組だぁ〜…未来とはちがうクラス〜!」と、はしゃいでいる。
一緒のクラスではないこと、まだ名前が見つからないこと。私の心の中は、不安でいっぱいだ。
その時、「C組、橋本未来…私の名前、あったっ❢」
よかったぁ、ちゃんと合格してる。名前があった。C組なんだ、私。
さとみは、私の顔を見て「お互い、素敵な友達つくろうね!でも、私の中では未来が一番の友達だからね」と、私を安心させるようにぎゅっと抱きついてきた。
「私も、そう思ってるよ。教室離れても、遊びに行くねっ」こういう会話をしていると、さとみと友達になれてよかったと心底思う。

そして…、さとみは一足先に教室に入る。その隣の教室に、私も一歩踏み出した。
「おはようございます。」
ニコッと笑うその笑顔と、ぴしっと着こなしているスーツは間違えるはずがない。
『あの』先生だ。
私は、顔が赤くなりながらも「おはようございます」と返す。
「席は出席番号順だから、自分の出席番号のところに座ってね。」
「はい。」
と自然に返したけれど、ドキドキした。
そしてほのかに、海の香りがした。

そして、私の前に座っている女の子が振り返る。
「おはよう、私は春野葵。これから、よろしくね」少しだけ高い声に、白い肌。
「おはよう、私は橋本未来です。これから、よろしくね」と私も自己紹介をする。
「未来ちゃん!二つ結びがすごく似合ってるね!可愛いっ」
笑顔で私の手をとって、無邪気に足をバタバタさせる。
元気で明るい子と友達になれたんだ〜、と安心する。自分から、話しかけに行くなんてできないと思っていた私は、葵ちゃんに感謝していた。
20分から、体育館に行かなければいけないけれどまだ時間がある。私は、それまで葵ちゃんとたくさん話をしていた。

「えー、もうすぐ20分になるのでそろそろ移動を始めてください。」先生がいう。
私は、時計を見ようと教卓の方に目を向けようとした。そのとき先生と目が合った。
さっきよりも、近い距離で。
「友達、できてよかったね。あ、数学のテスト今日あるんだけど、自信ある?」
質問は心臓の音が大きくて、はっきりと聞き取れなかった。でも、「うん。」と答えてしまった。
きっと、私は数学が苦手だから正しい答えをかけるのは半分位かもしれない。
だけど、自分の気持ちに対する正しい答えはだすことができた。

入学式のあの日から、私は先生のことを好きになってしまった。