……ん?青木と一緒に居るって事は、この人も“黒龍士”の一人だよね??
どっかで聞いたような…白銀の男……あー、思い出せない…
喉まで出掛かっているが思い出せない私はモヤモヤした気持ちが消えなかった
「…オイ、空太まだか」
「ん?ああ、ゴメンゴメン。すっかり忘れてた」
「……はぁー」
フードを被ったもう一人の人が初めて声を発したと思ったら、もの凄く面倒くさそうに早く此処から離れたいような感じで青木を急かしている
青木自身は気にも止めないかのようにまた莉子と話し出した
「…莉子、私もう帰るね」
「えっ?なんで?」
「今日、用事あるの思い出したの。だからさ、青木君には悪いけど莉子をお願いね?」
キョトンとした莉子の耳元でこっそりと誰にも聞こえないように「頑張って」と応援の言葉を掛けると、莉子は気付いたのか顔を真っ赤にした
今更緊張したのか莉子は下を向いてしまうが、私はお構いなしにその場を離れようとした
けれど思い出したように立ち止まった
「あ、ねぇアンタ。途中まで送ってよ」
「あ?なんで俺が…」
「いいから!ホラ、早く行くよ!」
近くに居たフードの男を引っ張りながら私はもう一度莉子達に振り返って会釈をした
学校を出てそのまま暫く歩くと、連れて来たフードの男に振り返る
「…ゴメンね。無理矢理連れ出しちゃって;;」
「別に。…丁度俺も帰りたかったし」
「そう?あ、バイクかチャリのどっちかで来てたりする??」
「………いや、今日は車で来たからない」
「へぇ。ま、それなら別にいいや」
もしバイクかチャリで来てたなら悪い事をしたなと思った私は、それを聞いて少し安心した
…莉子、上手く言えたかな?
あんなに緊張して顔も真っ赤にさせてる莉子は珍しいから、本当に青木の事が好きなんだと微笑ましくなったが少しばかり嫉妬してしまうのは秘密だ
莉子の今までの一番は私だったのに、それ以上の一番が莉子にできた嫉妬
でも私達の友達関係が終わる訳じゃない
それに、莉子の幸せを願っているのは本当なのだから
「…なぁ、あの二人は上手くいくと思うか?」
「えっ?……んー、そうだなぁ。そりゃあ多少はすれ違いとかケンカならあると思うけど…お互い好き同士なら大丈夫じゃない?」
「…………」
「ま、莉子が悲しむような事があったら私は全力で力になるけど」
「…友達思いなんだな、アンタ」
フードの男は無表情で(目元は見えないが雰囲気で;;)私に向かってそう言った
けれど、私はそう言う彼こそ“友達思い”なんじゃないのかと思った
だって“芳東学園”から此処の“南城高等学校“は意外と遠いのだ
歩くと約四十分程で、自転車でも二十分くらいは掛かる
「…ねぇ、そう言えば名前聞いてなかったんだけど……聞いていい?」
「……深窪圭(フカワケイ)。アンタは?」
「私は藤崎響。で、圭の方が友達思いだよ」
「!?……なんだよ、急に」
「だから、ワザワザ此処まで付いて来ちゃう圭の方が”友達思い“だよねって話」
フードの男の名前を聞き出して、案外あっさりと教えてくれたのは驚いたがさっきの圭の会話を繋げるように私は話し始めた
「……お前、変わってんな。俺のこと呼び捨てだし」
「あ、嫌だった?だったらやめようか??」


