……圭に告白をされ、泣いた私に達巳が圭にキレて
それから、青木が二人から私を引き剥がして
莉子と室内のベンチに座ってた筈…………の私だったんだけどなぁ
どこだろうねぇ、ここ
煙草を吹かしながら我ながらも呆れて途方に暮れる私はチラリと路地に視線を移した
「…っ…」
「……っ…が…」
立つ事も喋る事も出来なくなっている数人のヤンキー達が重なって血だらけな状態でそこにいた
何故、どうしてと、思いたいが理由を探さなくても分かってしまう
否、分かってるんだ
「…ごめん、な」
嗅いだ事のある鉄の臭い、ジンワリ来る拳の痛み、それから・・・なんだこの、震えと無性に”何か“に押し潰されそうな感じ
(……っなんで…なんで”また“こんな事になってんのっっ……!)
もう戦わないと決めた筈だった
もう、喧嘩で誰かを傷つけないって決めた筈だったのに
なのにどうして喧嘩を求めて誰かを傷つけようとするんだ─────・・・
今まで一度も、女として平和に生きてこれて…こんな事はなかったのに
本当の意味で私は”紅蓮“でない自分に戻ってしまったのか?
あの荒れてどうしょうもないクズな私に…
孤独で血に飢えたような”怪物“に……
嫌だ
それだけはないと思っていたのに、ならないと決めたのに
自分で制御できない悔しさは今も昔も”紅蓮“の時も変わらないって事か
(…変わらないのなら……また同じ過ちを犯すなら私は─────・・・)
足元に視線を下げた私は、足の周りに落ちている吸い殻を見て「いつの間にこれだけ吸っていたんだろう」とボーッとした脳で思っていた
すると、いつから震えていたのかズボンのポケットに仕舞っていた携帯に気付く
取り出すとそこに表示されていた名前をジィっと見つめてから、ゆっくりと電話にでる
《っ!もしもし!?響、お前どこにいんだっ》
「…声がデケェよ、達巳。場所なんか知らねえし」
《っは?》
電話に出ると鼓膜が裂けそうなくらいの怒鳴り声と、心配していると伝わるくらいの達巳の動揺をした感じが伝わって苦い顔になった
「あー、ワリィけど迎え来てくんない?多分、×××の近くだと思うんだよね」
《っお前、なにやってんだよ!》
「莉子達には悪いけど、戻りたくないんだよ……だから、上手く言って今日は皆解散って事にしてよ」
《あぁ……分かった……ちゃんと伝える》
「…ワリィな」
《ん…じゃ、あとで》
「おぅ」
プツリと電話を切ってもう何本か分からない煙草を口に咥える
この煙草のように、私の記憶も過去も燃えて灰になって消えてしまえば楽になるんだろうかと思いながら