「っ……ならテメェはどうすんだよ」

「俺なら、何回だって何十回だって諦めねぇよ!やっと、やっと見つけたんだ…もう、手放したくねぇんだよ!!」

「……っ!」

「やっと再会できて、俺は決めたんだよ。もう、何があってもアイツを独りにしないってっ」

達巳はそう言って圭の胸ぐらから手を離した

切なそうに悔しそうな気持ちが痛いほど伝わるくらい、達巳の気持ちも本気なんだと分かる

(…この二人がこれほどアンタを想ってる)

たった一人の為に、これほど熱くなれる二人を見て俺は凄いと思った

それほど、響ちゃんには人を惹きつける魅力があるんだと

「……悪かった。そうだな、たった一回…たった一回振られたくらいなんでもねぇ」

「別に、諦めるなら諦めるで俺は構わねーけどなっ」

寧ろライバルが減って好都合だと付け足す達巳に、吹っ切れたのか圭の表情はスッキリした感じだった

「お前が言ったんだからな。俺はもう諦めねぇよ」

「……あっそ。好きにすれば?」

「あぁ。」

どうらや話は丸く終わったようだ

俺は一安心をして、もう大丈夫だと言う為に安藤さんに電話を掛けようと携帯を取り出す

「………っ青木君!」

けれど、手にした直後に慌てて走り寄ってくる安藤さんの姿が見えて驚く

「っ安藤さん?どうしたの??」

「どうしたもこうしたもっ……どうして、電話に出ないのっ……!?ずっと掛けてたのにっ」

珍しく安藤さんは怒ったように詰め寄ってくるものだから、俺は携帯の画面を見て五回も掛かって着ていたのに今やっと気付いた

「っえ!?こんなに……何かあったの!?」

「あったから電話したの!ってそんな場合じゃないの青木君っ…響が、響がっっ」

「お、落ち着いて安藤さん。藤崎さんが、なんだって?」

「響がっ……居なくなったの!!」

「えっ!?」

泣きそうな顔をして安藤さんは俺の服にしがみつくようにして、響ちゃんが居なくなったと言う

その言葉は圭達にも聞こえていたのか、驚くように目を見開いていた

安藤さんの様子は異常で、俺達はまず何があってかを安藤さんに簡単に話してもらう事にした

どうやら飲み物を買いに行っていた間に居なくなったらしい

「ど、どうしよう……アタシのせいだ…アタシが、離れたからっ」

「だ、大丈夫だから。俺達も探すし…落ち着こう?ね」

「無理だよっ……だって、響、様子が変だったもん!分かってた筈なのに、アタ、アタシっ…」

あまりに切羽詰まったように言う安藤さんに、これはただ事でないと察した圭と達巳はどうして探すか考える

「っあ、待って。俺から一応試しに電話掛けてみる」

「はっ?ケー番知ってんの達巳」

「おぅ。昨日のうちにな」

そういうと電話を掛けだした達巳に俺達は静かに待つことしか出来ない

もし、電話に出なかったらかなりヤバいかもしれない

何かに巻き込まれたのかと不安の気持ちが押せ寄せる

「……ックソ!早く出てくれっ」

なかなか出ないと達巳も不安からか苛立ち始める

たった数分だが、俺達には何時間も経ったように感じた

「っ!もしもし!?響、お前どこにいんだっ」

やっと出たのか、達巳は慌てたように話し掛ける

「…………っは?……っお前、なにやってんだよ!……あぁ……分かった……ちゃんと伝える……ん……じゃ、あとで」

電話を切ると達巳は溜め息を吐き出した

「響、なんだって?」

「…あー、なんか気分悪くなって先に帰ったってよ。彼女さんにごめんて伝えてってさ」

「な、なんだぁ……よかったぁ…」

達巳の言葉に安藤さんは座り込んで安心したように嬉しそうに呟く

けれど、あの達巳の表情は何かあると俺や圭が見破れない筈がない

俺達は険しい顔で達巳を見るが、首を横に振ってクチパクで「まかせろ」と言った

圭は納得していないようだが、俺は安藤さんの事もあって頷いて今日はもう解散しようと提案し各自で帰る事にする

迎えの車を呼んで、俺は安藤さんを送る為に先に帰った

……だから、響ちゃんが今どうなっているのかなんて知るよしもなかったんだ