-空太Sibe-
安藤さんと響ちゃんを見送ってから俺は二人の方へと振り返った
「……で、何がどうなったか説明してくんないかな?」
振り返ると二人は俺に殴られた頭を撫でている
正直言って、この二人が響ちゃんに好意を抱いているのは知ってるし応援だってしたいと思う
でも、それで響ちゃんが困るなら俺的には身を引いて欲しいとも思っている
安藤さんと今こうやって恋人関係になれたのは響ちゃんのおかげだと思う所があるからだ
あの時、もし響ちゃんが安藤さんを応援してくれなかったら……きっと振られてたか距離を置かれていたかも知れないから
「…何がどうなったかなんて俺が知りてぇよ。あの響が泣いた事なんて今までなかったんだ」
「……俺さ、待ち合わせ場所に居た時から気になってたんだけど。達巳は、響ちゃんといつ知り合ったの?」
「一年前に。でも急に居なくなったからずっと探して……昨日やっと見つけたんだよ」
「あー・・・じゃあ、探してた人って響ちゃんだったんだな」
「そう。圭には宣戦布告する為に昨日のうちに話した」
横目で圭を睨み付ける達巳に、俺は溜め息を零して今度は圭に視線を向ける
「……圭、何があったか話してくれ」
どうやら圭は泣かれると思ってなかったらしいのか、かなりショックを受けているみたいだ
それでも、ポツリポツリと圭は泣かれる前の話をしてくれた
「───で、気付いたら泣いてた」
「泣いてたじゃなくて、泣かしたんだろ」
「達巳、黙ってろ。……それで、理由は分からないんだな?」
俺が聞くと圭は頷き寂しそうな表情をしている
これはかなりショックが効いているようだ
「……はぁ。状況は分かった。圭は悪くない……でも、響ちゃんの気持ちそっちのけでアレコレ押し付けるのはよくないと思う」
「…………んだ…」
「ん?」
「そうでもしないと、アイツは俺自身を見ないと思ったんだ」
「圭……」
こんな圭の姿は長年一緒に居た俺ですら初めてかもしれない
恋愛に対して興味すらなかったあの圭がこんなにも一途で想い続けるなんて
本気で響ちゃんを好きなんだなと伝わってくる
「……でもアイツ、泣いた時言ってた。無理だって……俺、振られたんだな」
「っオイ!」
「はっ、ちょ達巳!?」
自分は振られたんだと落ち込む圭に、達巳は胸ぐらを掴んで今にも殴りそうな勢いで圭を睨み付けた
「諦めるのかよ!たった一回で?っふざけんな!!」
「達巳……」
「なんだよ!いつものお前らしくもねぇ!!テメェの気持ちはそんなモンかよ!?」