「なに、やってんだよ?圭」
「っ達巳…」
「なにやってんだって言ってんだよ!なんで、なんで響を泣かした!!」
視界を塞がれた響は、頭上から普段聞かない低い声で圭を怒鳴る声が達巳だと分かった
ことの重大さに気付いた響は慌てて口を開く
「達巳っ!違うの、これは私が勝手に泣いちゃっただけで…!」
「それでも泣いたのに変わりねぇよ」
「っいいから、手どけて…!」
必死に訴えるが達巳は聞く耳を持たないとばかりに目元を覆う手を退けようはしない
そればかりか、響が退かそうとすれば手の力を強めてくる
(……最悪だ……達巳がブチキレてる…!)
視界が塞がれていて表情は分からないが、声と殺気に満ちた雰囲気に響はどうしたらいいか分からなくなった
そして、今のこの状況で圭がどんな表情をしているのかが不安だった
自分が泣いてしまってショックを受けただろうか、それとも泣く理由がなんなのかと悩んでいるのだろうか
本当に、申し訳ない事をしたと思った
(…これじゃ、夢で言われたのが現実になる……また、傷つけてしまうの…私は)
ビクともしない達巳の手をどうにかして退かそうと手に力を込めた時だった
「った!」
「ってぇ…!」
二つの呻き声が聞こえたと思えば、響はグイッと誰かに引っ張られて達巳から解放されていた
「っ!?」
「藤崎さん、大丈夫?」
「えっ、あ、青木君?」
「ごめんね。ちょっと強く引っ張りすぎた。それと、安藤さんと二人でちょっとあっち行ってて?」
「…あ、あの…?」
状況をよく把握できていないという表情をしている響に、青木は莉子に向かって軽く頷く
それを合図に莉子が響の腕を優しく掴み誘導する
「ちょ、莉子?」
「大丈夫だよ。青木君に後は任せて、ね?」
優しく言う莉子だが、多分気付いてないだろう
(……どうして、莉子が傷ついた顔をしてるの?)
莉子の表情を見て、響は何も言えなくなった