怜には詮索するなと釘を刺したが、本音を言えば聞きたいし知りたい
それで、少しでも響の事を知れるなら……少しでも力になれるならと思って
けれど、それで響が居なくなる事が怖くて聞けないもどかしさに圭は微かな苛立ちを胸にチケットを店員に渡した
「此度のご来店ありがとうございます。ごゆっくりご覧下さいませ」
ニコッと微笑んだ店員の横を通り過ぎる圭に続いて響達も中へと入って行く
「……響、抜けたい時は言えよ?いつでも俺が連れ去ってやるからな」
「バーカ。ここまで来たなら逃げねぇよ」
中に入ると辺りは薄暗くて外のうるさかった音がなくなり、いい感じのBGMが店内から聞こえてくる
圭は離れた位置に居て響達が来るのを待っているから、このヒソヒソ話す会話は聞こえないだろう
「なら、圭が嫌になったら俺んとこまで来て。絶対に守るから」
「…それもねぇよ。そもそも守られるなんてガラでもない」
「まぁ確かにな。でも、俺は何があっても響の味方だから……それだけは忘れんなよ?」
響の前に出て真っ直ぐに見つめてくる達巳の瞳は真剣なモノで、一瞬目を奪われてしまうほどの魅力があった
その言葉が本気で言っているモノだと分かってしまうくらい
「………達巳、」
「ん?」
「……………お前、変なモンでも食ったか?なんか変だぞ」
「っな!人が真剣に言ってるのにお前っ……」
「あーはいはい。んな話しは“俺”に勝ってから言いな」
けれど、まるで伝わってないと言わんばかりに響は真剣な表情をしたかと思うと呆れたように会話を交わした
達巳の肩に手を置き、通り過ぎる瞬間に達巳に向かってニヤリと口元を歪ませ「ま、勝てないだろうけどな」と嫌みたっぷりの言葉を付け足して
「っ……クソ………反則だぞ…今の」
ボソリと呟く達巳の言葉は、先に進んで行く響の耳には届かず……他の人にすら聞こえていないだろう
今居る場所が暗くて助かったと内心思いながら、達巳は熱くなった顔を冷ます為に軽く呼吸を整えてから皆の元に向かった