さて、もう此処までくれば分かる者も居るだろうが一応言っておこう
茶髪の髪を黒髪のウィッグで隠してシークレットブーツを履いて、軽く男装メイクをしている伊達眼鏡を掛けている、このイケメンは名を響と言う
普通の人には男にしか見えない男っぷり
流石というかなんというか……響だからこその仕上がりである
話を戻すが、珍しいと言わんばかりに聞いてきた響に達巳は眉を寄せて視線を逸らした
「あー・・・アレだ。たまたま買い物をしに、な」
「はっ?何、その歯切れの悪い言い方」
「それよりお前、時間大丈夫なんか?待ってたんだろ」
歯切れの悪い達巳に違和感を感じたが、上手いこと話題を変えられて響はハッとして携帯の時計を見る
「やばっ、10分前過ぎてんじゃん!」
「なら早く行かねぇとな。急いで行くぞっ」
「あ、ちょっ!なんでお前が仕切ってんの!?」
手首を持たれて引っ張り出した達巳に訳が分からないと混乱する響はされるがままにさっきの場所まで戻っていく
差ほど離れていなかったのが幸いしたのか、時計台にたどり着いたのはほんの数分だった
「…あれ、あそこに居るのって…」
「……っしまった!」
「て、おい!?」
時計台の真下には可愛らしく着こなす可愛い女の子が男集団の輪を作っていた
それに気付いた達巳が見覚えのある姿を見つけ声を発したと同時に響は掴まれた手を振り放して、その男集団と女の子の間に割って入って行った
「─────触んな」
今にも女の子に触ろうとした男の手を払いのけると、響は女の子を後ろに隠すように庇う
「っあぁ?なんだテメェ」
「“俺”の連れに触んなっつってんだよ」
「…っ……な、なんだよ……いい、行こうぜ…!」
ガン飛ばしてきた男は、響の殺気ある睨みに適わないと悟ったのか動揺しながらその場を他の奴らと一緒に消えて行く
ホッとした響は後ろを振り返り、申し訳なさそうな顔で女の子に話しかけた
「…大丈夫?莉子。なんもされてない?」
「っえ?その声……も、もしかして響っ!?」
「うん。この格好なら莉子を護れるんじゃないかなって…でも、女子に絡まれて逃げてる間にこんな事になってゴメンね?」
ほんのり頬を赤らめた莉子は、驚きと困惑で頭がいっぱいである
なんせ姿はどこをどう見ても男で、さっきの男集団を追っ払う時の声は低かったのだ
男にしてはやや高い声だが、まるっきり違和感のない響の男装に莉子は唖然とその姿を眺めている
「……莉子?」
「えっ、あぁ!もーっっビックリしたぁ;;まさかこんなイケメン男子になっちゃうなんて思ってなかったから!」
「そう?なら大丈夫だね。これで莉子に近付く奴は少なくなるかな」
「……いや、寧ろ群がって来そうだけど。主に女子達が;;;」
「ん?何か言った??」
ボソリと小さく呟いた莉子の言葉が聞き取れず小首を傾げて訪ねたが、なんでもないと言われてそれ以上の要求はしなかった


