「達巳?帰らないの?」

俺が昔の思い出に浸っていると、心配するような顔をした響が声を掛けてきた

「え?ああ、帰るよ」

「私、ここからでも帰れるよ?」

「それは駄目だ。ちゃんと送る」

我に返った俺はベンチから立ち上がり、響と一緒にバイクまで歩く

響は苦笑いをしながらも、ちゃんと付いて来ていた

「……なぁ、ケー番教えろよ」

「ん?なんで」

フと響に振り返ってそう言ったら、響は不思議そうな顔をした

でも、俺はこれだけは譲れなかった

「なんでって…;;知らないといざって時に連絡取れないだろ」

「えーっ。いいよ別に」

「俺が嫌なんだよ」

「……はぁ、仕方ないなぁ。達巳も頑固だね」

「フッ、総長のがうつったんだろ」

諦めた響は、ポケットから携帯を取り出して番号を見せてくれた

俺は番号を暗記して、自分の携帯に登録して響にかける

「登録しとけ」

「はいはい」

なんだかんだ言っても、響はちゃんと登録して俺に見せてくれて「これでいい?」と言った

その携帯には、しっかりと俺の名前で登録されていて…顔が少しにやけた

「ん。あとさ、皆の前でも”達巳“って呼んでよ。前みたいに」

「あー、はいはい。っても、もう行かないと思うけど」

「いいから!呼んでくれよな。じゃないと返事しねぇから」

携帯をしまい込んでいる響は、俺の言葉にまた「はいはい。分かったよ」と苦笑いを浮かべて言った

でもさ、響…あの総長がお前を手離す訳ないんだよ

だってあの人は、本気でお前に惚れてるって今日分かったんだ

お前を見る、あの人の目は…他の女を見てた冷たい目じゃなくて本気で惚れた奴の目をしてたんだよ

……俺もそうだから

「はぁ…よりによってライバルがあの人なんて;;」

「ん?なんか言った??」

「…いや、なんでもねぇよ」

バイクに跨がり後ろに乗った響が聞き返すが、俺は誤魔化してバイクを走らせた

…まぁ、俺も諦める訳ないけどな

いつかはぶつかるかも知れないが、それでも手放す気はない俺は…今の関係からどう変えようか考えていた