「達巳?」

「…普通年頃の男の頭は撫でたりしないぞ」

どうやら達巳は子供扱いをされたのが気に入らなかったらしい

「あー、ごめんごめん;;」

私は即座に謝り手を引っ込めた

多少気まずくなった雰囲気に、なんとか話題はないかと考えて先程の達巳の言葉を思い出した

「…圭にも同じ事言われたなぁ…;;」

「同じ事?」

「そー、圭がしつこくして来た時にね。”私がどんな人間か知ってるの?“って聞いた事があったんだ」

ベンチに座っていた達巳は私を横目に見ていて、話しを急かす事なくジッと聞いている

私も暗くなった空を見上げながらゆっくりと話す

「…そしたらさ、”関係ない、お前はお前だ“って」

「………圭らしいな」

「で、その後酷い事言っちゃったんだ。…私も人のこと言えない事言っちゃった…」

笑って話す私だけれど、やはりやり切れない気持ちもあった

圭に言った言葉は、自分が言われても当然の事で言われたくない事でもあった

それを聞いて圭が傷付かない訳がない

でも、それでも圭は私に関わろうとした

「…圭は、不思議な人だね。だから皆、そんな圭に着いて行くのかな…」

「……響、」

「でも、だからこそ圭達とは居られない」

「響っ!?」

「…ごめんね、達巳。私はもう、誰かを傷つけたくないんだ」

ベンチから立ち上がり、私は達巳の顔を見て言った

「…二度と戦わない。そう決めたんだよ」

この言葉の意味を、きっと達巳は知らない

けれど、私はそれでいいと思った

あんな悲しくて辛い事を達巳が知る必要はない

達巳は今を生きているんだから