それに圭は多分、驚いた顔をしたのだろう

勿論私も驚いたからだ

「…なんの真似だ?」

「圭…今日はもう帰してやりなよ。しつこい男は嫌われるぞ」

達巳を睨む圭に、なんともないかのように達巳がそう言えば舌打ちの音が聞こえた

それを合図に達巳はクルッと私の方に振り向いてニッコリとしていた

「さて、圭から許しが出たし?俺が送ってやるよ」

「えっ?あ、うん」

「んじゃ、行ってくるわ」

手を引かれたまま私達は部屋を出た

なんだか気まずい雰囲気に私は黙っていると、バイクが数台置いてある場所にいつの間にか着いていた

「ん。乗りな」

「……ありがとう、達巳」

「アハハ、どういたしまして。てか、俺も話しあったし丁度イイ口実が出来て良かったよ」

優しく頭を撫でられてしまい、私はまた罪悪感が溢れてきてしまう

しかし達巳は気にもしないでバイクの後ろに私を乗せるとエンジンをかけた

「じゃあ、ちゃんと掴まってな」

「…ん。ごめんね」

「……………」

私の小さな謝罪の言葉にはエンジン音で聞こえて無かったのか、あえて返事をしなかったのかは分からないがきっと聞こえていたと私は思った

バイクが走り始めた事に、私達は止まるまで一言も喋ることはなかった