(…気づかないで!)

そう心の中で念じながら、私は達巳の前で普通を装った

「……ああ、“はじめまして”。俺は久遠 達巳だ」

「っ!…私は、響。宜しく」

「ん。宜しくな」

久遠 達巳(クドウ タツミ)と自己紹介をした彼は、本当に今初めて会ったように普通に挨拶をしてくれた

それに一安心して此方も自己紹介をし終わると、達巳はスッと手を差し出した

「あ、あの?これは…」

「握手してよ。宜しくっつったじゃん?」

差し出された手を私は恐る恐るとしながらも自分の手を出しかける

すると、急に持っていった手を達巳が更に伸ばし私の手を掴んで一気に近付いた

「っ!?」

達巳は私の耳に口を近づけて、誰にも聞こえない声でボソリと呟いた

“久し振り、響”

その言葉に驚いた私は目を見開いた

けれど直ぐに普通に戻し、何事もなかったように振る舞った

達巳は私からゆっくりと離れて手を離した

「っおい!達巳、なにしてんだよ!」

「ん?居たの、悠大」

「居たんだよ!つか、知ってたよな!?;;」

焦ったように近寄ってくる悠大に、達巳は今気付いたと言うよとピキッと何処からか音がし、悠大は達巳に掴み掛かって文句を言った