……だからこそ、私が関わったらいけないんだ

大切なモノになる前に

「…どうした。友達を悪く言うなんて、お前じゃないだろ」

「お前じゃない?そんなの分からないじゃない」

「分かる。昨日あんなにタンカ切った奴だからな」

あーいえばこう言うとは、まさにこの事なのだろうと私は思った

何故、彼は私の言っている事を理解してくれないのだろうか

私はただ、もう誰も傷つけたくないというのに彼は…圭は私の心を乱す

「…私が、どんな人間か知ってるの?」

「関係ない、お前はお前だ」

「………アンタ、仲間を失った事あるでしょ?」

「っ!」

「その顔は図星か。だろうと思った」

私は腕を組み、冷たい視線で圭を睨んだ

「失って、裏切られて、挙げ句には傷つけて……だから私は暴走族が嫌いなの」

「………お前は、どうしてそこまで憎むんだ」

傷ついた顔で圭はそれでも真っ直ぐに私の顔を見ていた

まるで、昔自分が目にした”彼ら“のように

「…”天空龍神“って知ってるでしょ?私は、彼らの事を尊敬してたの」

「してた?」

「でもそれを呆気なく壊した”紅蓮“は消えた……もう、どこにも居ない…彼らを捨てた!彼らを傷つけたまま!!」

「………」

「理由なんていらない。ましてや、逃げ出したなんて理由も彼らには通じない……”紅蓮“さえ居なかったら、”天空龍神“は今も名を誇りに思って生きていけたのよ…」

話していて、私は泣きそうになった

だって私は、彼らを”傷つけて“しまったまま”逃げ出した“んだから…

どんなに謝罪しても消えない罪を私は犯してしまった

その事がずっと私の身体を見えない鎖で繋いでいる

私に自由なんていらない…

きっと、これを知って圭も幻滅するだろう

No.2とNo.3は誰よりも”天空龍神“を憧れ続けていたと思うから

No.1のようになりたいがために、彼らはただひたすらに前を向いていた

そんな彼らを、私は傷つけてしまった

私さえ……居なくなれば、それで解決する

「…なんだ、それ」

話を聞いて俯いた圭に、私はやっぱりと思った

それと同時に”これでいいんだ“とも思っている

「…これで分かったでしょ?私がどうして族が嫌いか」

「ああ。でも、尚更探し出す理由が出来た」

「っは?探し出す??」

「俺はずっと”紅蓮“を探してた…消えた一年前からな」

「……なんで?」

意味が分からなかった

圭が”紅蓮“を探してる?

どうして探す必要があるのか、今の私には分からない

けれど、圭は真っ直ぐと迷いが吹っ切れたような顔だった

「…俺は、一度だけ会った事があるんだ。そして、救われた」

「………”紅蓮“が、救った?」

圭は何を言っているのだろうか

私は一度も会った事なんてない筈だ

こんな白銀の髪、私は知らない

ああ、駄目だ…頭が痛くなってきた

「オイ?」

「………………」

「響?」

圭が話していた時、圭の顔が嬉々としていて私は必死に思い出そうとしたがどうしても思い出せなかった

「…いつ?」

やっと言葉にしたのは、たったその一言だけ

けど圭はそれだけで言いたい事が分かったのか、ゆっくりと懐かしむように話し始めた