…後ろに誰かいる?

私は警戒しながらゆっくりと後ろを振り返った

「……誰…?」

「…俺だ」

「っ圭!?」

振り返った先に居たのは、昨日とは違う髪の色をした圭だった

「待ってるって言ったろ」

「いやいや!ってか、髪!どうしたの!?」

「ああ、目立たないように黒髪のウィッグ被ってる」

圭は普通に話すが、私はあまりの驚きに固まる

「…響?」

「…………」

だって、圭には似合わないと思ったから

今までに誰かの容姿を指摘した事はないし、あまり関心してはいけないと思っていたから言わなかった

けれど、何故だろう

圭の容姿には口を出したくなる

「響?…どうした」

「…似合わない」

「は?」

「圭にその髪は似合わない。昨日のがいい」

「………っなんだ、それ」

真っ直ぐに圭の顔を見て話すと、圭は顔を逸らして制服の中に着ている白いパーカーのフードを被った

「…お前、案外ストレートに言うよな…」

「そう?って、それより圭……ずっと待ってたの?」

「……ああ」

私に、圭の考えている事が分からない

昨日私に転かされて怒っているのかなと思ったけれど、今の態度からしてそうじゃないと感じた

じゃあ、圭は一体なにしに私を待っていたのだろう?

もう一つの可能性を言うなら、私の正体がバレて脅しに来たというのもある

しかし”アレ“は男として振る舞っていたし、周りにも男だと言っていた

女だと知っているのは幹部の数少ない数人だけだし、あの刺青さえバレてなければ大丈夫の筈だ

………分からない

「…圭は、どうして私に構うの?」

「お前が欲しいからだ」

「昨日、言ったでしょ?私はモノじゃない」

圭から目を逸らして私は溜め息を漏らした

これ以上、圭に関わってはいけない

私のことを諦めさせなければいけない

……私が、彼を知る前に、彼に情が湧く前に離れなければきっと……私が彼から離れられなくなる

そう思った

「…俺は、お前をモノのように言った事は謝る。だが、お前が欲しいのは本当だ」

「なんで?私の中身なんて知らないでしょ?」

「これから知ればイイだろ」

当然のように圭から出た言葉は、酷く胸に刺さった気がした

「……私の何を、知ってるって言うの?」

「響?」

「大体、感情なんてくだらない。私が今までの女と違うから惹かれたとか、そんな感じでしょ?転かされたもんね。でもそれは違う」

なんで私また、墓穴を掘るような事をするのだろう

「私は、アンタら族が大ッキライなの!喧嘩をして、誰かを傷付けるような連中じゃない」

「…響」

「そもそも、莉子もどうかしてるのよ!族なんかと付き合ってさ!」

「っ響!」

「……っ!」

圭は私の肩を掴んで睨むような、傷付いたような顔で私をジッと見つめる

ああ、私はまた”誰か“を傷付けてしまった

私の言葉がそうさせてしまう

分かっていても、止まらない

暴走族が皆悪い訳じゃないし、良い奴らだって居る事は分かってるし知っている