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-圭Sibe-
空太に無理矢理連れ出された俺は、南城高等学校にいた
どうやら莉子という女に、今日会えないかと連絡をもらったらしく嬉々として迎えにいくと空太が言い出した
本人は嬉しさを隠しているようだが、俺からしたらダダ漏れとしか言いようがない程に空太は浮かれている
莉子という女を待つ間、空太は急にソワソワし出して「もしかして返事の事かな」だとか「振られたらどうしよう」だとかが隣からブツブツと丸聞こえで俺は溜め息しか出なかった
早く倉庫に帰って寝たいと俺は内心そう思っていた
すると、空太に駆け寄って来る女がいて雰囲気的にコイツが莉子という女だとわかった
どうやら女友達を一人連れてきているようだ
……どうせ、この女共も他の言い寄ってくる女共と対して変わんねーだろーに
空太には悪いが、俺はあまり女を信用していない
だから莉子という女もその友達にも、俺はどうでもよかった
その時は本当に、そう思っていたんだ
まだ付き合ってもいない二人がイチャイチャと見つめ合っていたので、俺は空太にまだかと聞くと悪気無いように忘れていたと言われた
それに溜め息を吐いていると、友達の奴が「莉子、私もう帰るね」と言い出したのだ
喋ったかと思えば、友達の奴は用事があるとかで莉子の耳元で何かを言って去ろうとした
けれど、急に振り返って俺に向かって「ねぇアンタ、途中まで送ってよ」と言って引っ張っていく
俺は訳が分からないまま引っ張られていたが、後ろをチラリと見たときなんとなく状況が分かった
…ああ、コイツもしかして…
後ろでは空太に向かっていた莉子が顔を真っ赤にして俯いている姿があった
多分、この友達は莉子という奴の背中を押してやったんだろうと思う
だから、あそこに俺もいたら邪魔になるから連れ出したんだと理解する
学校から暫くして離れたことを確認すると、友達の奴は振り返って気まずそうに俺に謝罪した
でも、理由がなんとなく分かっていた俺はあまり気にしてないので「別に。…俺も丁度帰りたかったし」と言った
それから友達の奴と話していく内に、そのへんにいる女共とは違うと思いはじめて
友達思いの優しい奴だなと、つい口走った
奴はそれを聞いてどう思ったのか、急に名前を聞いてきて俺は戸惑いながら名乗った
俺もその雰囲気で名前を聞くとすんなりと答えてくれた
でも、次の言葉に俺は驚いた
奴…響は俺の方が“友達思い”だと言い出したのだ
響は、俺に対して媚びを売ろうともしないし、タメ口だし、変わっていると思う
でも、そんな響を…俺はもっと知りたいと思った
だから響に「俺のモンになれ」と言った
響ならいい、そう思えた俺だが響自身は冗談を言ったんじゃないかと思っているらしい
真剣だと伝えたが、それも呆気なくスルーされる
…今まで、俺から誘って断られた事なんてなかったのに……やっぱり響は他の女共とは違うな


