「確か野崎さん、だったわよね?あなた、このお店でアルバイトしているの?」

「あ…ハイ…」

驚いたような表情を見せている彼女に。


(…あれ…?成桜って、バイト禁止じゃなかったよな?)


一瞬、そんな不安が頭を()ぎる。

彼女は生徒会長だ。

もしも、バイト禁止の校則があるとすれば、どんな理由があろうとも学校内の風紀を乱す者に対して、きっと厳しく取り締まるだろう。

だが、その点に関して特にそれ以上触れて来なかったので、夏樹は内心でホッとしていた。

そんな時、後ろから声が掛かった。

「おっ?薫じゃないかっ。久し振りだなぁー」

「あっ直純先生、ご無沙汰しています」


(…直純先生の…知り合いなのか…?)


きょとんとしている夏樹に気付いた直純が、「夏樹、良いよ。ありがとう」と、軽く手を上げて案内をしないで良いことを告げてくる。

「あ、はい」

小さく頭を下げると、夏樹は自分の持ち場へと戻って行った。

「薫、こっちへどうぞ。よく来てくれたな」

直純先生は、早乙女さんを目の前のカウンターへと案内した。