放課後。


今日はバイトに入る為、夏樹は『Cafe & Bar ROCO』に向かって駅前裏通りを歩いていた。

端から見ても分からない程度ではあるが、その足取りはどこか軽い。

今日、愛美に過去の全てを話せたことで、夏樹の中では何処か気持ちが軽くなったような、そんな気がしていた。

そして今日は、それ以外にももう一つ嬉しいことがあったのだ。


帰り際に珍しくメールが届いていることに気が付いた夏樹は、それを開いて思わず表情を緩ませた。


(雅耶からだ。…珍しいな)


そこには『今日部活帰りにROCOへ寄るね』と、短く書いてあった。

雅耶と会えるのは随分と久し振りで、夏樹は嬉しくなった。

時々、夜に電話を貰ったりして、いくらか近況を話したりはしているのだが、なかなかお互いに会う時間を作れないでいるのが現状で。

本当なら会いたければ、少しでも会いに行けばいい…と、思うのに。

家も近いのだから、いつだって会いに行ける距離なのに。

なかなかそれを出来ないでいる自分。


(…だって、改まって会いに行って、何を話したらいいかなんて分からない…)