「あの子にとっては、ある意味予想外の出来事だったんだろうな」
夏樹が帰った後、出て行ったその店の扉を見詰めながら仁志が言った。
その独り言のような呟きに、洗い終わったカトラリーを一つ一つ拭きながら片付けていた直純は、作業の手は止めずに顔だけを仁志に向けた。
「ん…?夏樹のことか?」
「ああ。あの子を見てると、女の子に戻る日が来るなんて思ってもみなかったって感じだろう?自分でもどうしたらいいのか、まだ迷っている風に見える」
真面目な顔をして語る仁志からは、夏樹を気に掛けているのが見て取れて、直純は微笑みを浮かべた。
自分とは付き合いの長い親友だが、仁志は基本的に人間関係はドライだ。
だがこの男も、夏樹のことをこの店のただのアルバイトという目ではなく、温かい保護者のような目で見てくれているのだと思うと、それだけで何故だか嬉しい気持ちになった。
そう思ってしまう自分こそが、すっかり保護者のようであるのだが…。
(妙に庇護欲をそそられちゃうんだよな…)
何故だか、放って置けない存在なのだ。
それは、夏樹の資質によるものなのだろうけれど。
夏樹が帰った後、出て行ったその店の扉を見詰めながら仁志が言った。
その独り言のような呟きに、洗い終わったカトラリーを一つ一つ拭きながら片付けていた直純は、作業の手は止めずに顔だけを仁志に向けた。
「ん…?夏樹のことか?」
「ああ。あの子を見てると、女の子に戻る日が来るなんて思ってもみなかったって感じだろう?自分でもどうしたらいいのか、まだ迷っている風に見える」
真面目な顔をして語る仁志からは、夏樹を気に掛けているのが見て取れて、直純は微笑みを浮かべた。
自分とは付き合いの長い親友だが、仁志は基本的に人間関係はドライだ。
だがこの男も、夏樹のことをこの店のただのアルバイトという目ではなく、温かい保護者のような目で見てくれているのだと思うと、それだけで何故だか嬉しい気持ちになった。
そう思ってしまう自分こそが、すっかり保護者のようであるのだが…。
(妙に庇護欲をそそられちゃうんだよな…)
何故だか、放って置けない存在なのだ。
それは、夏樹の資質によるものなのだろうけれど。



