プリズム!

「やーん♪怒んないでよっ。でも…何だかそんな夏樹ちゃんも、今となっては懐かしいカンジだよねぇ」

最初は茶化し気味だった長瀬が、不意にしみじみと言った。

「そうね…。今では夏樹ちゃん、すっかり女の子らしくなったものね」

清香も皆のサラダを取り分けながら頷いている。

夏樹もさり気なく数あるグラスを傍へと引き寄せると、そこへ皆の飲み物を注いでいく。

「そ…そう、かな…?自分では、よく分からないけど…」

注いだグラスを配りながら、何気なく視線を横にいる雅耶へと向けると、目が合った。

「自然な感じで俺は良いと思うよ。前は話していても一人称がオレだったりしたけど、今はそれもなくなったよな?」

「あら?そう言えばそうよね。いつの間に…」

意外な顔を向ける清香に、今度は夏樹が苦笑を浮かべた。

「まぁね…。でも、それは自分でも自覚してるんだ」

「自覚…?何かキッカケでもあったのか?」

不思議そうに聞いて来る雅耶に夏樹は微笑むと、反対隣りにいる冬樹を見つめた。


「それは、ふゆちゃんのお陰だよ」


「えっ?僕…?」

驚いている冬樹の横で、夏樹は(うなず)くと続けた。

「こないだ…ふゆちゃんが来てくれた時、二人で色々な話をしたでしょう?その時…私、ふゆちゃんの前では『オレ』って言えなかったんだ…」

「言えなかった…?」

その言い回しに雅耶が首を傾げる。

「うん。だって『オレ』っていうのは、ふゆちゃんを演じてた自分自身だから…。ふゆちゃん本人を目の前にして『冬樹』の自分がいるのはおかしいって、すごく…矛盾(むじゅん)してるって思ったんだ」