プリズム!

『でも…じゃあ、何で泣いてるんだ…?』


その突然の雅耶の指摘に、夏樹は思わずドキリとした。

雅耶に全てを見透かされているような気がして。


弱い自分も。

心の奥底に渦巻く、醜い想いさえも…。


「……っ…。泣いて…なんか…」

咄嗟に否定を口にするも、自分の意志とは裏腹に余計に涙が零れて来て嗚咽(おえつ)を抑えることだけで精一杯だった。

『俺が気付かないとでも思ってるのか?』

責めるような、(さと)すような…そんな雅耶の声。


(そんなの…分かんないよ。分かんないけど…)

携帯を持っていない右腕の甲で溢れてくる涙をひたすらに拭う。

「今の自分を…見られたくないんだ…」

何とかそれだけを言葉にすると。

夏樹は、自らの口元を押さえて声を押し殺して泣いた。


自分でも、もう何が悲しくて泣いているのか分からなかった。

未だに変われずにいる中途半端な自分に、ただただ不甲斐なさを感じるからなのか。

雅耶の横に寄り添って並び立てる綺麗な彼女に、途方もない劣等感を感じてしまうからなのか。

そこから生まれる、胸を刺すような痛みが苦し過ぎるからなのか。

あるいは…。

電話の向こうから聞こえてくる雅耶の優しい声に。

苦しい程に切なさが込み上げてくるからなのか、さえも…。