プリズム！

「何でだよ？雅耶…。お前、夏樹ちゃんと約束してたんじゃないのかよっ？夏樹ちゃん…ずっと、お前を待ってるんじゃないのか？もしかしたら、今もずっと一人で…」


ガタンッ！！


長瀬の言葉を最後まで聞かずに雅耶は勢いよく立ち上がると。

「急用が出来たので、お先に失礼します！！」

声を張り上げてそれだけ言うと、すぐにその場を後にした。


「何だ？どうした？」

「久賀くんっ？」


一緒に食事をしていた実行委員の皆の声が後ろから聞こえたが、雅耶は振り返らなかった。


（バカ雅耶…。仕方ないから、コレは俺が片付けといてやるよ）

自分の食べ終えたトレーもそのままに駆け出して出て行ってしまった雅耶を見送って、長瀬は心の中で呟いた。



雅耶は大変な盛況振りを見せている校舎の中、人混みの合間を抜けながら足早に廊下を歩いていた。

先程食堂を出てから、ずっと夏樹の携帯に電話を掛けているのだが、呼び出し音が鳴り続くだけでなかなか出る気配がない。


（どうして出ない？！いったい何処にいるんだ、夏樹っ！！）


雅耶は思いのほか焦っていた。

まさか、夏樹を一人にしてしまうなんて思ってもみなかった。

長瀬や友人の女の子達と一緒に楽しく過ごしていると、勝手に思い込んでいたのだ。


（俺は馬鹿だ。あいつが成蘭(ここ)へ来るのに、どんな気持ちでいたか分かっていた筈なのに…）