(力のヤツ、信じらんないッ!)


賑わう人混みの中を、夏樹は一人歩いていた。

無礼な言動は既に論外だが、結局力が来たせいであの場所を離れることになってしまった。

本当のところは特に移動する必要などないのだが、夏樹は力が苦手なので、殆ど条件反射的なモノであった。

男同士の時は、まだマシだったような気もしたが、やはり昔からの苦手意識は自分の奥底に根付いているようだ。


(何より、あのデリカシーの無さ!最低だよ。あーいうのは、少しくらい痛い目みても解んないんだろうな…)

力が口にしていた『奪われちゃったファースト・キス事件』そのものが、この苦手意識を生んでいる根本にあることなど気付きもしないのだろう。


(でも、これからどうしよ…。何処か時間潰せる場所ってないかな…?)

このまま一人で校内を歩き回る気にはならなかった。

少し開けた通路の横でとりあえず夏樹は足を止めると、プログラムを眺めて場所探しをする。

すると、目の前を見慣れた成桜の制服を着た女生徒が二人通り掛かった。


(あれは…生徒会の…。もしかして、会議…もう終わったのかな?)

そう思って様子を伺っていると、二人の会話が耳に届いて来た。