オアフ島要塞。真珠湾のアメリカ海軍基地を守る強力な要塞群である。その強力な装備と上陸箇所のない島の構造と、日本本土との位置的条件から、日本軍による真珠湾攻略は絶対に不可能であるとされていた。しかし一方で航空機攻撃がまだ一般的でない1920年代、オアフ島の防空体制に不備があるという意見は少なからず挙がっていた。そして日本軍が宣戦布告前、または直後にアメリカ西海岸を攻撃する可能性も指摘されていた。

1932年 某日 オアフ島沖96km

サラトガ「ハワイは平和でいいところね。混乱だらけの世界情勢なんてどうでもよくなってくるわ」

レキシントン「そういえばサラはここに来たばかりだったわね」

レキシントンは28年からハワイ演習には何度も参加しているが、サラトガは昨年までサンディエゴにいた。

サラトガ「これからの時代、戦争は航空戦主体になるのかしら。元々巡洋戦艦だった私たちからすれば、少し複雑な気分ね」

レキシントン「航空機の力は侮れない。戦争は今までの戦法とは大きく変わっていくわ。間違いなくね」

この日の第19回演習において真珠湾海軍工匠へのの模擬空襲で二人は完全に成功を納めていた。

サラトガ「でもそれも、ここまで日本が空母を持ってこれたらの話よ。そんなこと彼女たちにできるのかしら」

レキシントン「さぁ…でも備えはするべきだと思うわ」

レキシントンは重巡オーガスタが太平洋艦隊をハワイへ駐留させていることを極めて危険だと主張していたのを思い出す。艦隊はサンディエゴに駐留すべき、と。

レキシントン「宣戦布告に先だって真珠湾攻撃があるかもしれない…」

しかし実際には艦隊が動かされることはなく、潜水艦による攻撃に備えての駆逐艦の哨戒強化に留まり、防空に対する準備はなにも成されないでいた。



41年11月27日
ホノルルにて アメリカ海軍は陸軍と、ウェーク島とミッドウェイ島への増援について協議していた。そこで問題となったのが陸軍戦闘機の輸送である。両島には荷揚げ桟橋設備がなく、また陸軍機は空母からの発艦はできても着艦はできないため、今後ハワイの防衛に再び利用できない可能性があった。

レキシントン「私たちの任務はオアフ島を守ることであって、陸軍機を輸送することは防空能力の低下に直結するわ」

アリゾナ「一体なにをそんなに恐れているんだ。日本軍がここを航空機で攻撃する可能性でもあるっていうのか?」

オクラホマ「そんな見込みは全くありませんよ」

結局予定通り増援を送ることは決定し、翌日エンタープライズを中心とする艦隊がミッドウェイ島に向け派遣された。

アリゾナ「戦艦は行かなくていいのか?」

エンタープライズ「高速で行かなくてはならない任務よ。足手まといになるから要らないわ。それより、もし日本軍と行き合った時はどうするの?」

アリゾナ「常識で、やるのさ」

エンタープライズ「分かったわ」

頷くエンタープライズ。

エンタープライズ「彼女たちが射程内に入ったら容赦なく撃つわよ」

エンタープライズがミッドウェイ島へ出撃し、12月4日にはレキシントンが出撃した。
こうしてハワイからは全ての空母が消えてしまった。