それにしてもこの男は、自分が浮いているということに気づかないのだろうか。


田舎の学校は全校生徒合わせても300人ほどで、まして学食に来る顔ぶれはほぼ同じだ。


弁当やパンの者は教室で食べる。知らない人間にはすぐ反応する。


「誰??」


という顔で、チラチラ見る生徒も多い。


「懐かしいなあ!!小さいけど大学の学食みたいで!えーと、これ、好きなん取って先お会計したらええんですよね??」


とりあえず声はデカい。
厨房を挟んだカウンターに並んだプラスチックの器に盛られた料理を物色する。


「あれ??」


すぐ脇で大きな声を出され、咲希が持っていたお盆の食器がカシャンと鳴る。


「自分、これ好きなん?!たこ焼き!!関西人はやっぱ粉もんやで!!」


食後に食べようと何となく取ったたこ焼きが3個ほど入った器に反応した樹荏。


咲希は心底、後悔した。


「俺やっぱ、あんた気に入ったわ!!別嬪やし!よろしゅう頼むで」


背中に手を回される咲希。