「あれっ??コーチ車は??」


最初に見た車ではなく、ロードバイクになっていた。


「ああ、壊れたから売ってコイツにした。自転車の方が動きやすいしな」


咲希を先頭に、3人で家に向かう。


「どの辺に住んでるんや」


「5キロくらいありますかね、そんなに早く走れないので。山道もありますし」


「結構遠いし、物騒やな」


「よく自転車通学認めてもらえたね」


「高校生なら普通やろう」


「あれっ?知りませんでした??咲希のお父さん有名な建築家で、デザイナーもしてるんですよ」


「へえ」


「櫻逸喜(サクラ イツキ)って、知りません??」


鳴瀬に有名なのに知らないんですか?という言い方をされ拗ねる。


「元々関東でお仕事されてたんですけど、お父さんが海外出張も多くて、体崩したお母さんの療養も兼ねてお母さんの実家のあるこの場所に家を建てたんですって」


「やたら詳しいな」


「僕も去年引っ越してきて、言葉が方言じゃなかったから、気にはなってたんです」


「だからなおさら、親しくなりたかったんですけど、邪魔が入りました」


「どういう意味や」


そろそろ山道に差し掛かり、息が切れてきた。