「ちょ、ちょっと、おいで」


「嫌です!離してください!」


「ええから!!ちょっとおいで」


鳴瀬を睨むと引き剥がし、咲希をトイレの方に連れていく。


一番驚いたのは親戚の女性だろう。パーマ頭の、いかにも世話好きそうな、大阪のオバサマだ。


目隠しの作り物の植え込みで、向こうから姿が見えないことを確かめると、


「どういうコトかな??コレは??」


壁際に追い込まれ、ひきつった顔で、必死で声を抑える。


「何でアイツが一緒なんや!?話違うやんけ!!しかも俺の、どストライクな格好で!!めちゃくちゃ可愛いし!!」


「……先輩との初デートですから。それに一人で来いとは言わなかったでしょう?」


やっぱり来るんじゃなかった。
でも来ないとずっと付き纏われる。


先輩と付き合えない。


「なん!?言うてへんけど!!言うてへんけど!!一人で来るやろ普通?!しかも鳴瀬とデートって!!??」


「あなたの恋人として会わされるのがわかってて??のこのこ1人で??」