間一髪でよけたサーシャは、それでも踊りを止めず、まるで挑発するかのようにライオンとの距離を測り、対峙していた。
観客の野次がとぶ。
イーザは、目がよいのでサーシャの口元が動いているのに気づいた。
幾たびかライオンは飛びついたが、
サーシャは絶妙な角度でかわしていった。
そうして、ライオンが体勢を整えている間に間合いを詰め、
軽々とその背中に飛び乗った。
場内で拍手が巻き起こる。
目の見張る芸当だった。
最初こそはライオンも振り落とそうと暴れていたが、
彼女は操るようにして乗りこなし、
最後にはその背中の上で立って踊った。
人々は惜しみない歓声を送った。
音楽が止み、
いつしか大人しくなったライオンは、サーシャと寄り添うようにして、共に檻の中に入っていった。
それから、デブデブとした巨漢を引きずりながら、マッダーラが再び登場し、終幕の挨拶を告げて、サーカスは終わった。
高揚した人々と共にイーザ達の一行も外にでた。
再び中へと案内されたので、
イーザは、仲間には外の好きな場所で待機するように命じてから、
一人で付き人と建物へと入っていった。

