それからも幾つかのやりとりをし、商談が成立してから、
誓約書にイーザとマッダーラの血の指紋を押して、部屋を出て行こうとした。
女がイーザを見つめていた。
「サーシャ」
マッダーラはそれを知ってかしらでか、
彼女の腕の鎖を持ち上げ、下卑た顔をすり寄せながら、イーザ達に見せつけるようにして呟く。
「…お前からもお願いしろ。
今宵のサーカスにおいでくださいと」
イーザ達は振り返る。
サーシャと呼ばれる混血の女はたじろぎ、眼を伏せた。
マッダーラは無言で、首にかけてある鎖を引っ張った。
サーシャは、かはっと噎(む)せ、乱れた髪をマッダーラに梳(す)かされながら、イーザをみた。
「お…ねが……しま…す」
喘ぎのなかで絞りだした声は、あまりにも小さく、憐れだった。
イーザは無言で踵を返すと、
マッダーラは付き人をよこす、と言って、下劣な笑い声をあげた。

