奴隷箱から少し離れたところに、
向こう岸がみえるか見えないか、というほどの大きな河川がある。


人はこの水に生かされてる。


今日も、幾人かの人が、水浴びしたり、水を汲んだりしていた。

夕陽はだいぶと沈み、
一層赤さを増してギラついていた。

水のせせらぐ音が心を解す。


イーザは、羽織っていたマントを脱いだ。下で結わえていた髪も解いた。そしてふと視線を遠くにしたとき。


川の真ん中あたりに人がいた。


イーザの視力をもっても、ここからではハッキリとはみえない。

しかし恐らくは女だろう。

必死で何かを洗い流そうとしているようだった。


そして、向こうの方も気づいたようで、動作を止め、こちらをみていた。


なぜか、眼が離せなかった。

川の音が止み、時間が止まり、全てが無になるような感覚に陥ったとき、

突然、女が消えた。

川の中に倒れたのだ。