莉子「やっとお昼だー!」
午前中の授業が終わり、
やっとご飯が食べられる!
あたしたちは、
いつもの中庭に行こうとした。
その時、事件が起こったんだ。
〈ガラガラ〉
勢い良く教室のドアがあいた。
「ちょっときてくれない?七星さん」
すごく怖い顔をした女子軍団が
あたしをにらんでる。
え?!これ、夢?!
あたしは、毎日目立たないように
過ごしてきたはず!
なのに、
なんでこんなことになってるの?!
そのままあたしは、
女子たちの気迫に負けて、
体育館裏に来た。
歩美は、いつの間にか消えていた。
どこ行っちゃったの?!
あたしのピンチだよ?!
だんだん事の意味が分かってきたころ、
ようやくボス的な女子が口を開いた。
「あのさ、なんで呼ばれたのか、わかってんでしょ?」
莉子「…」
「無視すんな、ブス」
莉子「…」
我慢しなきゃ…。
こういう人たちは、反論しても喜ぶだけ。
「あんたが真帆の彼氏を奪ったんでしょ!」
「そーよ!人の彼氏を誘惑するなんて、ありえない!」
え…何を言ってるの…?
真帆って、
たぶんこのボスだよね…?
彼氏を奪った?
なんのこと?!
ボスの周りを、女の子たちが囲んでる。
「とぼけても、無駄よ!あんたのせいで、真帆は別れたんだからね!」
「さいてー!」
どんどん話が進んでいくけど、
人違いじゃないの…?!
あたし、ほんとに何も知らないもん。
莉子「あたし、そんなことしてないよ」
ボスの目を見て、言う。
けど、ボスは信じてないみたい。
ボス「雅也が、あんたのことが好きだから
別れようとか言い出したのよ!
どう考えても、
あんたが誘惑したんでしょ?!」
莉子「なっ!ちがうよ!
てか、雅也って人知らないし…!」
ボス「は?嘘つくとか、性格悪すぎ」
はあああ?!
なんであたしが
こんなに言われなきゃいけないの?!
なにもしてないのに!
それって、
勝手に向こうが
あたしのこと好きになっただけじゃんか。
あたしがあれこれ、言われる筋合いない!
ボス「ほんっとに、
ありえないんだけど…」
莉子「あたしはしてない!」
ボス「…ちっ、正直に言えば、
許してあげたのにね〜」
莉子「…なに…?」
ボス「もういいよ、好きにして」
あきらめた?!
とか思って、喜んだのは一瞬。
その声で、
あたしは女子たちに
突き飛ばされた。
「あたしたち、
前からあんたの事
大嫌いだったんだよね〜」
「真帆!!
ほんとにやっちゃっていいわけ?」
ボス「うん、その綺麗なお顔を、
もうほかの男子に
見せれないようにしちゃってよ」
…くるってるよ…。
好きにしてって、
あたしに言ったわけじゃないのね…。
女子なのに、人を殴ったりしたらだめでしょ…!
いろいろ言いたいことはあるのに、
体が震えて、声が出ない。
「じゃあ、いっきまーす♪」
目の前に、
鉄バットを持った女の子がきた。
もうだめっ!
「やめろ」
ぎゅっとつぶった目をあけると、
怖い顔をした未緒がいた。
莉子「未緒?!なんでここにいるの?!」
未緒「それはこっちのセリフだよ、
なにしてんの」
莉子「……」
あたしはうつむいた。
「この女子たちにいじめられてるの!」
なんて、言えるわけないもん。
それに、あたしと未緒が知り合いだなんて
この子たちが知ったら、
どうなるかわからない…。
ボス「ちょっと〜未緒!
今、楽しい遊びしてんだから、
邪魔しないでよぉ〜」
さっきまで、
怖かったボスが
急に甘ったるい声を出してる。
さすが、未緒…。
一軍の未緒と、
地味なあたしが兄弟だなんて
この人たちは知らないんだもんな〜。
未緒「へー……遊び?」
ボス「そう!
この男好きをこらしめてるの〜♡
ていうか……この子、未緒にまで
手出してるんだぁ〜。
ほんとありえないわぁ〜。」
未緒「ふーん……なんか楽しそうじゃん」
ボス「あ、未緒もやる?!」
未緒「…やろっかな」
はあ?!
何考えてんの?!
っ!……もしかして…
日頃の恨みをはらそうとしてるわけ?!
めっちゃ笑顔だし…。
未緒「まあ、でも、俺がこらしめるのは、
お前らだけどな」
ボス「え…?」
み…お…?
未緒「つーか、男好きはお前らだろ?
莉子のこと突き飛ばしといて、
俺の前じゃ猫かぶってさ。
正直、引くよ?」
未緒がそんなことを
いつもの笑顔で言うから、
少し、別人みたいで怖いと思った。
未緒「莉子、行くぞ」
未緒は、
あたしをの腕を引っ張って、
女子たちの方をにらみつけながら、
歩きはじめた。
「ちょっと!ど、どーいう関係?!」
「やだ!あたしの未緒が〜」
後ろからそんな声がきこえる。
すると、急に未緒が振り向いた。
未緒「こんなことになるなら、
隠さなければよかった」
莉子「…え?」
未緒「俺が、近くにいないと
心配ってこと」
莉子「???」
どーいうこと?
さっきから何をぶつぶついってるの?
なにしようとしてるの?
「おい」
そして、低い声で言った。
未緒「こいつ、俺の彼女だから、
今後なんかしたら、
許さねーぞ?」
騒いでる女の子たちに、
黒い笑顔で言った未緒さん。
あたしの頭は、パンク状態。
今…あたしのこと、彼女って言った…?
「彼女?!」
「未緒って、彼女いたんだ…」
「やばいじゃん…あの未緒が怒っちゃったよ…」
うわ…。
絶対、この噂広がるじゃん!
今まで、あたしたちが知り合いだってこと
頑張って隠してきたのにさ…。
未緒「ん?
おい、莉子…
何ニヤニヤしてんだよ…」
莉子「べっつに〜」
未緒「そんなに俺に
彼女って言われたことが
嬉しかったんでちゅか〜?」
莉子「そっそんなことないし!
何言ってんの?!
やっぱ嫌い!未緒!」
さっきまで怖かった未緒が、
いつもの未緒にもどって、
安心した。
あたし、これから平和な生活は送れそうにないです。

