歩美「あ!

   あの人じゃないかしら?!」


ファミレスの前に

ついたのはいいものの、

心の準備ができなくて、

あたしは入口で立ちどまってる。



歩美の視線の先には、

テーブルに座って、

スマホをいじってる

あたしたちと同い年ぐらいの男子がいた。




顔を見たけど…

知らない人だ。



歩美「じゃあ、あたしはここで……」

莉子「え?!

   一緒に来てくれるんじゃないの?!」


歩美「もちろん、

   莉子が何かされたら

   飛んでいくけど、

   さすがに関係ない人が行ったら

   変なことになるでしょ〜?」


莉子「…そっか…そうだよね…

   よし。行ってくる!」


歩美は、

すぐに、お迎えの車が来て、

すぐさま帰っていった。


あたしも、行くか…。


その男子の席に行くと、

あたしを見て、ぽかーんとしてるこの人。



とっても綺麗な髪に、カッコイイ顔。

絶対、モテるよ…

この人…!

 


莉子「ど、どーも…藤田莉子です…」


「…工藤浩平です」

莉子「えっと…座ってもいいですか…?」

「…どーぞ」



結構、無口な人なんだ…。

さっきから

全然、表情変わらないし…。



とりあえず座るけど、

すっごいこの人見てくる…。


ん?
この制服って…?

莉子「もしかして、南高校ですか?!」


浩平「…そーだけど…」



南校って、あたしの学校じゃん!


なんでこんなイケメンに

気づかなかったんだろ?!


ぜったい、有名な人だよ…。

こんなんだから、

鈍いって言われるんだよね…。



浩平「…俺のこと知らない…とか?」


莉子「ごっごめんなさい…」


浩平「いや、別に気にしてない……けど」



なんか、しょげてる…?



浩平「じゃあ、

   俺と知り合いだっていうのも

   知らねーの?」


莉子「え?!

   知りあい?!」

浩平「………。

   ひーくんって…

   よんでただろ………//」


急に真っ赤になる

工藤くん。


かっかわいい!


でも、やっぱり覚えてないな…。



浩平「…お前が引きとられる前に…

   離れるけど、

   大きくなったら結婚しよう 

   って言って…………って、

   なんで俺、こんな一生懸命

   説明してんだよ…//」



工藤くんは、照れながら、

頭をかいた。



あ、その癖…知ってる。


んん!

思い出した!

照れたら頭をかくのは、ひーくんの癖…!


この癖が、すっごい可愛くて、好きだったんだよ!



莉子「え、まって!

   …ひーくん…?

   ほんとにひーくんなの…?!」


浩平「……そーだよ…

   はぁ……やっと思い出したのかよ…」


莉子「だ、だって!

   そんなにイケメンになってるとは

   思わなくて…」


浩平「……俺は、

   高校でお前を見た時から

   気づいてたけどな…」


莉子「ごめんって!ひーくん!」




やば…なつかしい。


ひーくんっていうのは、 

あたしがまだ、

お母さんたちと暮らしてた頃、

近所に住んでた子供。




同い年で、

いつも一緒に遊んでた。



けど、お母さんたちが死んじゃって、

引っ越すことになったあたしに、

ひーくんが言ってくれたんだ。 


  (大きくなったら、

  俺が結婚してやるからな!)



こんな大事なこと…

なんで忘れてたんだろ…。



もちろん、子供の頃の話だから、

本当に結婚しようとは、

ひーくんも思ってないよね。



けど、簡単に忘れて…

あたし、ひどい。



浩平「何、暗い顔してんだ?…」

莉子「っ…ごめんね……

   ひーくん……」

浩平「…謝ることじゃねーだろ?…」

莉子「ううん、ほんとにごめん」




あたしがうつむくと、

ひーくんに、頬をつままれた。



莉子「ひーふん?!

   ひひゃいひょ?!」


(ひーくん?!いたいよ?!)って

言いたいのに…、

もちろんつままれてるから、

言えません……。



浩平「ぷっ…、

   なんて言ってんの?」



笑いながら、ひーくんは手を離した。
 


莉子「もう!

   なんなの?!急に!」


浩平「やっぱ、元気な方が好き。」


莉子「…ありがと……」



ひーくんは満面の笑み。


かわいい…

背が高くなっても、

顔がかっこよくなってても、

ひーくんはひーくんだ。


性格も、大人っぽくなってる

と思ったけど、元気で、うるさくて、

そんなひーくんは変わってないはず。


浩平「莉子が笑ってる方が、

   俺も楽しい」



ほら。

楽しいことが大好きなとこ、

全然変わってない。




ひーくん。


小さい頃に何度も呼んだ

その名前。



今も、会えただけでこんなにうれしい。


ひーくんは、

あたしの大事な人なんだ。