~MAOU LIFE 39日目~

魔王妃「来週は七夕ですねー!ゼクス様は七夕伝説のお話はご存知ですか?」ウキウキ…
魔王「うむ。彦星という牛飼いが織姫という貴族の娘と恋仲になったが、互いに夢中になりすぎて、特に彦星が仕事をサボりまくり、それを怒った初代天帝に引き離され、年に一度だけ会えるというあの話だな」
魔王妃「………初代天帝?あのー…もしかして実話なんですか?」
魔王「うむ、昔アーリアに聞いた。彦星は聖人の格を剥奪され人間界に島流し、織姫は変わらず天界にいるが、聖人貴族としての格を最下位クラスにまで落とされ、没落寸前のところで留まっているらしい。しかし流石にやり過ぎたと、初代天帝の計らいで天界の入り口付近にあるミルキーウェイ一級河川で年一度だけ会えるという事になった。互いに会う為の手続きや移動にかかる費用は彦星と織姫がそれぞれ相談の上、自腹を切るのが条件となっておるようだが」
魔王妃「………また聞きたくなかった話が」
魔王「…あぁ!笹の葉が鬱陶しい!」

ゼクスは城の中庭に巨大な竹(天界産)を突き刺し、縄と杭で固定していた。顔に葉が掛かり、邪魔そうにしている。その横でアーシュは伝説の裏事情を知り、暗くなっている。シャルルはそんなアーシュを尻目に猿列車に乗って楽しそうに遊んでいた。

魔王妃「でも…年に一回しか会えないって…私は寂しいです…」
魔王「確かにな」
魔王妃「ゼクス様も寂しいって思ってくれるんですね」ニコッ…
魔王「そりゃあな」
魔王妃「嬉しいですっ!あ、短冊書かなきゃですねー」ルンルン…

短冊に願い事を書く2人。アーシュの短冊には「家族と国民の健康」と「夫婦仲の円満」と「子供の成長祈願」が書かれている。

魔王「シャルルー、お前も書くかー?」オーイ…
魔王女「ほっぷぅ」ハーイ…

シャルルはゼクスに誘われて、嬉しそうにボールペンを握る。そして短冊には大きく『ほぷぅ。』と一言だけ書かれていた。落書きを書くと思っていたゼクスは目を丸くした。

魔王「アーシュ!大変だ!シャルルが字を書いたぞー!」
魔王妃「えぇっ!シャルルたんが!?早速願いが!」
魔王女「ほぷぅ?」

「ほぷぅ。」とはいえ、字は字。2人はシャルルを高く持ち上げながらクルクル回って喜んだ。

魔王「この短冊は魔力保護を掛けて、七夕期間終了後に即回収!」
魔王妃「そしてシャルルたん成長記録アルバムに永久保存ですね!」
魔王女「ほ、ほぷぅ…」

両親の狂喜乱舞振りにやや引き気味のシャルル。

魔王妃「そういえば…ゼクス様は何を祈願されたのですか?………えーっと?」ヒョイッ…チラッ…

アーシュがゼクスの短冊を覗くと書道の達人並みの達筆な字で何か文字が書かれていた。どこから筆と墨を出したのか謎だが。

魔王妃「あのー…何て書いてあるんですか…?てか…いつの間に墨を?」
魔王「ん?『夕食後はぷりん以外認めない!』と書いてある。あとこれは墨ではなく、ちゃんとボールペンだ。墨で書いた様に書いてみた」キリッ…
魔王妃「…宣言?てかボールペン!?あっ…本当だっ!」スゴイ…

そしてゼクスとアーシュが笹の葉に3人分の短冊を結び、手を合わせて願いを祈っていると、デスがお茶を持ってやってきた。

死神「笹は準備出来ましたか?」
魔王「うむ。お前も短冊書くか?」
死神「では書かせて頂きます」

デスは短冊に『もう少し給料が上がりますように』と書いていた。

魔王「それは我に直接言ったらどうだ?」
死神「嫌ですよ、怖いですもん」
魔王「一応魔界では三番目に高い給料を払っているんだがな…」ゴクゴク…

ゼクスはデスの持ってきたお茶を飲みながらデスをジロリと睨む。

死神「確かに毎月かなりの額を頂いておりますよ?しかし…魔王様の側近という仕事は思いの外、重労働でして…誰かさんがしょっちゅう仕事サボるから」チラッ…
魔王「…そういう事は直接言えるのな?」

~MAOU LIFE 39日目~ 終