~MAOU LIFE 25日目~
魔王「…ここは何処だ?」
ゼクスは寂れきった電車の駅のホームに立っていた。雰囲気は天国の門駅にも似ているが、何となく違う。生ぬるい風が頬を撫でる。
魔王「……はて?我はさっきまで城で寝ていたはず」
するとチンケで幼稚だが、所々音を外したオルゴールのような金属製の不気味な音楽が聞こえてきた。それと同時にこれまたチンケな子供用の列車アトラクションの様な乗り物がホームに到着する。その乗り物には生気のない人間が数人乗っていた。
魔王「フム…これに乗る以外にここから出る方法は無さそうだな」
改札の方を見ると何故かシャッターが閉まっている。ゼクスは渋々子供列車に跨がり乗車した。すると、かすれた汽笛の音を鳴らし、列車が発進した。発進して間もなく、妙に甲高い男の声でアナウンスが流れる。
声「この列車は途中下車は出来ません」
まるで猿が言葉を発した時の様な声だった。
魔王「乗った後に言うか?普通」
ゼクスの前には3人の人間が座っていた。先頭から男、女、男、ゼクスの順だ。周りの風景を見てみると霧の掛かった薄暗い田園風景が広がる。するとまたしてもアナウンスが流れた。
声「次は活け作り~、次は活け作り~」
その声と同時に刃物を持った小人が謎の奇声を上げながら先頭の男に襲い掛かる。列車が停止するやいなや、叫び声と共に生臭い血の臭いが漂ってきた。男が座っていた席には肉片だけが乗っていた。そのすぐ後ろに座っている女は微動だにしない。しかしゼクスの前に座っている男は小刻みに震えている。
声「次はえぐり出し~、えぐり出し~」
発進してしばらくするとまたも謎の声が聞こえ、先端がフォークの様になったスプーンを持った小人が女に襲いかかり、一斉に身体をえぐり回し、血の臭いが一層強くなる。最後に残った男の震えが強くなり、何か呟いている。
魔王「ほぅ、これは…」
再び発進し、しばらく走るとアナウンスが聞こえる。
声「次は挽き肉~、挽き肉~」
男「ひぃーーー!!!冗談じゃない!!!夢よ醒めろ夢よ醒めろ夢よ醒めろー!!!」ガクブル…
ウィーンという機械音が聞こえてきた瞬間、目の前の男が突然消えた。
声「逃げるんですか~?」
魔王「ははぁ、やはりな…」
これは夢の中の世界だと、ゼクスは確信した。しかし、この手のやり方は自分の知る悪魔の中では死神かインプ族しかいないが、どちらもこんな回りくどい事をする様な一族では無い為、誰の仕業なのかはまだ分からなかった。そうこうしていると先程消えたはずの男が突然目の前に現れた。かなり驚いている様子だ。そして再び悪夢から醒めようと必死にもがくが、中々醒める事が出来ない。挽き肉用の機械が顔に当たるか当たらないかというところで、男は再び消えた。
声「また逃げるんですか~?次は逃がしませんよ~?」
停まりかけていた列車は再び走り出す。しばらくすると、また同じ男が現れた。男はまた同じ言葉を連呼している。そしてまた機械が男に近づく。それと同時に男の言葉は叫び声になっていた。ついに機械の刃が男の足を捕らえたのだ。そのまま上へ上へと挽き肉にされていく。男の断末魔の叫びが途切れた所で、再び声がした。
声「お待たせ致しました。次は溶解~、溶解~」
魔王「ほぅ?面白い。我を溶かそうとな?」
再び列車がゆっくりとブレーキをかけ始める。すると硫酸の入った瓶を持った小人が複数やってきた。そしてゼクスにそれを一斉に浴びせ掛けた。
魔王「…………で?」ポタポタ…
声「え?」
魔王「ぬるいな…」
声「な、何故溶けないんですかぁー!何故溶けないぃぃぃぃぃ!」
アナウンスの声は困惑した様子で、次第に本物の猿の様な鳴き声になっていた。
魔王「お前………もしや人間に作られた魔物か?」
声「キィィィッ!!キィッ!!」
ゼクスは魔王剣を召喚し、列車に突き刺した。すると鼓膜を裂く様な叫び声が聞こえた。
魔王「うるさい。我の問いに答えろ。さもなくばお前を未来永劫…いや待てよ。そうだな…そうしよう」ピカーン…
声「え?」
ゼクスは列車に呪いをかけた。列車の側面には魔王の紋章が刻まれていく。
魔王「これでお前は未来永劫、我の物だ」
声「貴様は一体何者なんだぁぁぁ!」
魔王「魔王だが?」キリッ…
声「…え?なんでここに?」
魔王「それはこっちが聞きたい」
ゼクスは剣を列車から引き抜き、虚空を一閃する。するとバリバリと音を立てて空間が割けていく。その先には机に突っ伏して居眠りしているゼクスの姿があった。ゼクスは列車を空間の裂け目に放り投げ、自分も飛び込んだ。列車が城内に落ちた瞬間、物凄い金属の衝突音がした。
魔王「ん……戻ったか」
魔王妃「何ですか?!いまの音…って何ですかーこれ!?」
列車「イタタタ…」
魔王「これか?これはシャルルの新しい玩具だ」キリッ…
列車「おもっ…玩具!?」
魔王「拒否すれば永久スクラップの刑だ。あと時々我のサンドバックになってもらう」ギロ…
列車「…はい。異存御座いません」
魔王妃「でもこんな大きなもの一体どこで使えば…」
ゼクスは確かにという表情の後、閃いた顔をして、列車の1両車のみを残して、他車両を業火で焼き尽くす。列車は声にならない悲鳴をあげたが、ゼクスにうるさいと蹴りを入れられ呻きながら黙った。
魔王「シャルル、お前にお土産だぞ?」
魔王女「ほぷぅ?ほっ…ほっぷぅ!」キラキラ…
その日から猿列車はシャルル専用の玩具兼移動用の乗り物として、こき使われる事となった。
~MAOU LIFE 25日目~ 終
魔王「…ここは何処だ?」
ゼクスは寂れきった電車の駅のホームに立っていた。雰囲気は天国の門駅にも似ているが、何となく違う。生ぬるい風が頬を撫でる。
魔王「……はて?我はさっきまで城で寝ていたはず」
するとチンケで幼稚だが、所々音を外したオルゴールのような金属製の不気味な音楽が聞こえてきた。それと同時にこれまたチンケな子供用の列車アトラクションの様な乗り物がホームに到着する。その乗り物には生気のない人間が数人乗っていた。
魔王「フム…これに乗る以外にここから出る方法は無さそうだな」
改札の方を見ると何故かシャッターが閉まっている。ゼクスは渋々子供列車に跨がり乗車した。すると、かすれた汽笛の音を鳴らし、列車が発進した。発進して間もなく、妙に甲高い男の声でアナウンスが流れる。
声「この列車は途中下車は出来ません」
まるで猿が言葉を発した時の様な声だった。
魔王「乗った後に言うか?普通」
ゼクスの前には3人の人間が座っていた。先頭から男、女、男、ゼクスの順だ。周りの風景を見てみると霧の掛かった薄暗い田園風景が広がる。するとまたしてもアナウンスが流れた。
声「次は活け作り~、次は活け作り~」
その声と同時に刃物を持った小人が謎の奇声を上げながら先頭の男に襲い掛かる。列車が停止するやいなや、叫び声と共に生臭い血の臭いが漂ってきた。男が座っていた席には肉片だけが乗っていた。そのすぐ後ろに座っている女は微動だにしない。しかしゼクスの前に座っている男は小刻みに震えている。
声「次はえぐり出し~、えぐり出し~」
発進してしばらくするとまたも謎の声が聞こえ、先端がフォークの様になったスプーンを持った小人が女に襲いかかり、一斉に身体をえぐり回し、血の臭いが一層強くなる。最後に残った男の震えが強くなり、何か呟いている。
魔王「ほぅ、これは…」
再び発進し、しばらく走るとアナウンスが聞こえる。
声「次は挽き肉~、挽き肉~」
男「ひぃーーー!!!冗談じゃない!!!夢よ醒めろ夢よ醒めろ夢よ醒めろー!!!」ガクブル…
ウィーンという機械音が聞こえてきた瞬間、目の前の男が突然消えた。
声「逃げるんですか~?」
魔王「ははぁ、やはりな…」
これは夢の中の世界だと、ゼクスは確信した。しかし、この手のやり方は自分の知る悪魔の中では死神かインプ族しかいないが、どちらもこんな回りくどい事をする様な一族では無い為、誰の仕業なのかはまだ分からなかった。そうこうしていると先程消えたはずの男が突然目の前に現れた。かなり驚いている様子だ。そして再び悪夢から醒めようと必死にもがくが、中々醒める事が出来ない。挽き肉用の機械が顔に当たるか当たらないかというところで、男は再び消えた。
声「また逃げるんですか~?次は逃がしませんよ~?」
停まりかけていた列車は再び走り出す。しばらくすると、また同じ男が現れた。男はまた同じ言葉を連呼している。そしてまた機械が男に近づく。それと同時に男の言葉は叫び声になっていた。ついに機械の刃が男の足を捕らえたのだ。そのまま上へ上へと挽き肉にされていく。男の断末魔の叫びが途切れた所で、再び声がした。
声「お待たせ致しました。次は溶解~、溶解~」
魔王「ほぅ?面白い。我を溶かそうとな?」
再び列車がゆっくりとブレーキをかけ始める。すると硫酸の入った瓶を持った小人が複数やってきた。そしてゼクスにそれを一斉に浴びせ掛けた。
魔王「…………で?」ポタポタ…
声「え?」
魔王「ぬるいな…」
声「な、何故溶けないんですかぁー!何故溶けないぃぃぃぃぃ!」
アナウンスの声は困惑した様子で、次第に本物の猿の様な鳴き声になっていた。
魔王「お前………もしや人間に作られた魔物か?」
声「キィィィッ!!キィッ!!」
ゼクスは魔王剣を召喚し、列車に突き刺した。すると鼓膜を裂く様な叫び声が聞こえた。
魔王「うるさい。我の問いに答えろ。さもなくばお前を未来永劫…いや待てよ。そうだな…そうしよう」ピカーン…
声「え?」
ゼクスは列車に呪いをかけた。列車の側面には魔王の紋章が刻まれていく。
魔王「これでお前は未来永劫、我の物だ」
声「貴様は一体何者なんだぁぁぁ!」
魔王「魔王だが?」キリッ…
声「…え?なんでここに?」
魔王「それはこっちが聞きたい」
ゼクスは剣を列車から引き抜き、虚空を一閃する。するとバリバリと音を立てて空間が割けていく。その先には机に突っ伏して居眠りしているゼクスの姿があった。ゼクスは列車を空間の裂け目に放り投げ、自分も飛び込んだ。列車が城内に落ちた瞬間、物凄い金属の衝突音がした。
魔王「ん……戻ったか」
魔王妃「何ですか?!いまの音…って何ですかーこれ!?」
列車「イタタタ…」
魔王「これか?これはシャルルの新しい玩具だ」キリッ…
列車「おもっ…玩具!?」
魔王「拒否すれば永久スクラップの刑だ。あと時々我のサンドバックになってもらう」ギロ…
列車「…はい。異存御座いません」
魔王妃「でもこんな大きなもの一体どこで使えば…」
ゼクスは確かにという表情の後、閃いた顔をして、列車の1両車のみを残して、他車両を業火で焼き尽くす。列車は声にならない悲鳴をあげたが、ゼクスにうるさいと蹴りを入れられ呻きながら黙った。
魔王「シャルル、お前にお土産だぞ?」
魔王女「ほぷぅ?ほっ…ほっぷぅ!」キラキラ…
その日から猿列車はシャルル専用の玩具兼移動用の乗り物として、こき使われる事となった。
~MAOU LIFE 25日目~ 終
