~MAOU LIFE 15日目~

天使長「突然ですが、デス殿にお願いがあるのです」
死神「はっ…はい、何でしょう?」
天使長「私の恋人になって下さい!」
死神「えっ!?」ドキッ…
天使長「あ、あの、恋人の振りをしてほしいのです…」モジモジ…
死神「えっ?」ショボン…

行きつけのレストランで2人はいつものように仕事の話をしていると、リンデから頼まれ事をされた。内心喜んだデスだったが、あとの言葉でややがっかりした。

天使長「この間、私の幼なじみから久しぶりに連絡があり、その友人が結婚するという話になったのですが…」

リンデは長年恋人も居ないから可哀想だという流れになり、ついぽろっと結婚したいと思う恋人がいると嘘をついてしまった。その話に友人が興味を持ち、是非会わせてほしいという事だった。

死神「なるほど…そういう訳でしたか…」
天使長「あの…ダメ…ですか?」
死神「い、いえ、不肖このデス、こ、こここ恋人役、喜んで引き受けましょう!」
天使長「本当ですか!ありがとうございます!」

彼が恋人役を引き受けた為、4日後の太陽の日に天界にて友人に彼を紹介する事となった。

天使長「とは言ってもデートってした事ないし…どうしたら良いんだろう。あっ、そうだ」

リンデはアーシュに電話をかけて、事の成り行きとデートの時の振る舞いや服装を聞いた。

死神「演技なのは残念だが…デートなんて久々だなー…いつ振りだろう…高等部の時以来、か?いまのデートの流行りコースはどんな感じだろう…」

ピンポーン…ガチャ

魔王「ん?デスか、どうした?」

デスもゼクスに経緯を話し、オススメの天界デートコースを聞いた。そして太陽の日、スーツベストをパリッと着こなし、デスは待ち合わせ場所の忠犬ポチ公の銅像前で立っていた。

天使長「デスさーん!」

デスを呼ぶ声が聞こえ、その方向に目をやると、白いゆるふわのワンピースを着たリンデと、その友人が立っていた。

死神「か、可憐だ…」ドキドキ…

デスがリンデの姿に見とれていると、リンデと友人が傍まで小走りで駆け寄ってきた。

友人「へぇー、この人がリンデの?なかなか良い男じゃん」
天使長「あ、デスさん、こちら私の幼なじみの…」

リンデがデスに友人を紹介する。デスは友人の方を見ると衝撃で吹き出しそうになった。そこには筋骨隆々で逞しい体つき、まるで天帝アーリアを思わせる厳つい顔。だがそれに相反する可愛らしい服と髪型と綺麗な声。声と服装と髪型で女だと判別できるが、それら(特に声)がなければ完全にガタイの良い強面の男だと認識するレベルだった。

死神「あー、こんなのに可哀想とか言われたら嘘もつくよなー(心の声)」

互いの紹介が済み、デートする流れとなった。まずは魔王一家が月に一度の外食で天界での行きつけの洋食屋(主に学生に人気)をする事となった。店の外観は昔ながらの洋食屋といった感じで、店内は古びているが綺麗に掃除が行き届いており、客も多い。

友人「えー、ここ超安いじゃん!うわー、美味しそう!」

声だけならレベルの高い可愛らしさだが、姿を見ると残念レベルが高い。リンデの幼なじみは両手を頬に当て、ぶりっこな仕草でメニューを選ぶ。

天使長「さすがはデス殿…こんな良いお店をリサーチしているとは(心の声)」
死神「さすがは魔王様…こんな安くて人気のある店を知っているとは…(心の声)」

3人は頼むものが決まり、オーダー依頼する。
デスはハンバーグ定食、リンデはオムライス、リンデの友人はエビフライ定食とストロベリーパフェを注文する。

店員「お待たせ致しました」
友人「えー、こんなに量あるのー?私食べれるかなー?」

彼女はブリブリとしながら、何だかんだあっという間に食べ終わり、食後のパフェを食べている。

天使長「えーっと…魔王妃様が食事の時の定番イチャイチャアクションを教えてくれていたが…は、恥ずかしい(心の声)」モジモジ…
死神「ど、どうしました?リンデさん」
天使長「あ、あの、デスさん、あーんして下さい」ドキドキ…
死神「はっ、はい!…あーん」ドキドキ…パクッ…

デスは突然の「あーん」にドキドキしながら幸せを噛みしめた。正直緊張して味は覚えていない。食べさせたリンデも顔を赤らめている。

友人「2人ともウブ過ぎじゃなーい?」
天使長「い、いつもはだ、大丈夫なんだけど、今日はあなたが見てるから…その、なんか急に」アセアセ…
死神「演技だとしても幸せだ…(心の声)」ジーン…

ランチを済ませた後、3人は買い物をする事になり、思い思いの店に立ち寄って楽しんだ。

友人「あー、今日は楽しかったー!良いお店も教えてもらったし、リンデ、アンタ良い男ゲットしたんじゃん?…余計残念だね」
天使長「………そう、だね…ハハッ」
死神「ん?」
友人「もしかしてまだ言ってないの?彼も結婚意識してるかもだし、早く言った方が良いんじゃない?」

日も暮れ、友人は先に帰って行った。その友人の言葉が気になったが、気にしない素振りでリンデに声をかけた。

死神「今日は演技とは言え、本当に楽しかったです」
天使長「私も楽しかったです。演技でしたけど、これが私にとっては初めてのデートで、楽しかったけどなんだか悲しいです」

デスは拳をグッと握りしめ、勇気を振り絞り、右手でリンデの左手をとり、自分の左手を胸に当て片膝をついた。

死神「実は、ずっと前から好きでした。わた、私と付き合って下さい!私はっ…今日のデートを演技にはしたくないですっ!」
天使長「…ッ!!は、はい!私もずっと前から好きでした!こちらこそよろしくお願いします!」

デスが自分の想いをリンデに伝えると、リンデも顔を真っ赤にしながら応えた。2人はその後緊張しながらも夜がふけるまでデートの続きを楽しんだ。

天使長「デス殿…」
死神「デス…で結構ですよ、リンデさん?」
天使長「はい…デスも私の事は呼び捨てで構いませんよ?」
死神「わ、わかった。あ、あとお互い敬語はやめよう?リンデと私は恋人になったんだし」
天使長「うん…でも私、嬉しすぎて思わず告白を受けたけど、ちゃんと言わなきゃいけない事があるの…」

リンデは俯いて先ほど友人が言った『残念』という言葉についてだった。

天使長「これを言ったら嫌われるかもしれない…せっかく彼女になれたけど別れられるかもしれない」
死神「私は何があっても嫌わないし、別れないよ?」

リンデはポロポロと涙が零れ落ち、それを優しい笑顔でデスは拭ってやる。デスのその優しい笑顔にリンデは決心して重く口を開き、それを告白した。

天使長「実は私…男なの」
死神「…え?」

~MAOU LIFE 15日目~ 終