~MAOU LIFE 10日目~

天使長「本日、もう間もなく各騎士長との会議へのご出席。そのあと天界のコロシアムにて魔王様との訓練試合が主なご公務となります。尚、クルス様は天界・魔界・人間界を繋ぐ3世界ゲートの耐震補強工事の視察から戻られ次第、退勤となっております」
天帝「わかった…すぐに支度をする」

神の間にてアーリアがリンデから今日の予定を聞き、机に向かい書類等を手早くまとめる。

天帝「ふむ…今日の仕事は会議と試合だけか…しかし、前半は良いとしても後半の訓練試合はなるべくならしたくはないな…」

はぁ…とため息をついて、何気なく卓上の古い高級万年筆(ゼクスからの結婚祝いの品)を眺めた。

天帝「あやつとの戦いは楽しいが、そのあと酷く疲労がくる………憂鬱だ」

憂鬱に浸るアーリアを尻目に、時間はどんどん流れ、あっという間にゼクスとの訓練試合の時間となった。

魔王「今日は久しぶりにやる気の起きる仕事だ」ウキウキ…
天帝「そ…そうか」
魔王「どうした?いつもと違い、覇気が無いようだが」
天帝「いやー…」

城外のコロシアムの真ん中でゼクスとアーリアがお互いに剣と槍をクロスに交え、開戦前の挨拶儀礼を行う。

天使長「これより天帝アーリア様と魔王ゼクス様による訓練試合を行う!騎士の諸君、このお二方の試合をよく見て、己の技を鍛えてほしい!」

リンデが観衆である騎士団に向け試合開始前演説をする。

魔王「ククッ…読めたぞ?アーリア、お前…我と戦った後の事を考えておるな?」
天帝「う、うむ…情けない話だが…」
魔王「全くだ…そんな無駄に巨大な図体と厳めしい面をしている癖に」
天帝「体型と顔は関係ないであろうっ…」
魔王「まぁ…良い。お前が本気を出せるように一つ提案をしてやろう」
天使長「それでは…両者はじめ!」

リンデの試合開始の合図と共に、2人は後ろに跳び、間合いの外に出た。審判のリンデは2人から更に離れる。

天帝「提案…とは?」
魔王「今…3世界ゲートの補強工事をやっておろう?魔界と天界で5:5の負担だ。だが、もしお前が我に勝てば魔界側が工事費用を3割多く出してやる」
天帝「…私が負ければ?」
魔王「今夜我と酒を付き合え。当然お前持ちでな?」
天帝「っ!それではあまりにもゼクスの負担が…」
魔王「我はこの試合が楽しければそれで良い。それにお前にとってはどっちに転んでも悪くない条件であろう?さぁ…どうする?」
天帝「…良いだろう、受けて立つ!」バサッ…!
魔王「そう来なくてはな!」グッ…

アーリアは背中の巨大な6枚の白翼を広げ宙に羽ばたき、槍と盾を構える。ゼクスも地上で翼を緩く広げ、右手で剣を強く握り直し、平突きの構えを取る。いつも真面目で神々しいオーラを放つアーリアは当たり前として、普段ちゃらんぽらんなゼクスもこの時ばかりは大真面目でとてつもない覇気を放つ。

天帝「行くぞ!ゼクス!」
魔王「来い!アーリア!」

両者同時に動き、いきなり激しい打ち合いを始めた。その光景はその場にいた全員が圧倒され、まばたきすらも出来なかった。アーリアはその巨体からは想像も出来ないような素早い動きで撹乱しつつ、ゼクスの剛剣を盾でずらし槍で突く。一方ゼクスもアーリアの攻撃をかわしながら怒涛の連撃を浴びせる。

天帝「流石は魔王ゼクス…毛すら掠らぬか…」
魔王「我と対等に戦える相手はお前だけだ。訓練とはいえ、血が湧き躍るぞ!天帝アーリア!」

お互いに一歩も譲らない攻防戦が数時間続いたが…。

天帝「ゼクスよ?」スチャッ…
魔王「うむ…そろそろ終わりにしようか」ジャキッ…

一瞬2人の動きが止まったかと思いきや、再び激突する。それも先程までとは比べ物にならないスピードで…。

天帝「クッ…」ドサァッ…!!
魔王「約束通り…付き合って貰おうか?お前の溜まりに溜まった嫁への愚痴を肴に…な?」バサァ…スタッ…
天帝「…っ!?ふっ…お前という奴は…本当に優しい男だな」ニコッ…
魔王「勘違いするな、我は純粋に今月の酒代が…」
天帝「ありがとう…」
魔王「…フン」プイッ…

こうして2人はそのまま魔界の歓楽街へ飛び立ち、消えて行った…。
その頃魔王宅(101号室)では。

魔王妃「ゼクス様遅いなぁ…ご飯冷めちゃいますよー…?」ショボン…

アーシュはそのまま朝まで夫の帰りを待っていた。

~MAOU LIFE 10日目~ 終