セラはそれをかわすと相手に向かって氷の弾丸をいくつか飛ばす。

「…お姉さんさっきの人?」

「さっきの人が誰を指しているのかは知らないけれど、氷の弾丸を飛ばしたのは私よ。」

 声の主はセラたちよりも2つか1つ年下であろう少年だった。

「お姉さん強い人?」

「どうかしら。」

 再び振り下ろされるハンマーを凍らせる。

 そのまま蹴りを入れてハンマーを粉々にした。

「…強い人なんだね。」

「そのようね。諦める?」

 セラは周りの霧を風で晴らす。

「諦めないよ、やっと強い人に会えたんだ。」

 初めてしっかりと視界に写った少年は整った顔に無邪気な笑顔を浮かべていた。

「…そう。」

 この世界に魅入られた人間も少しはいるだろうとセラは考えていた。

 この架空世界のシステムに惹かれる非日常を望んでいた人間。

 (力を与える人間を間違えたとしか思えない。……いや、違うか。)

 架空世界を創りだした何者かがこの世界での出来事を見て楽しみたいと思っていたとしたら?

 可能性は多いにある。

「さぁ、お姉さん。始めようか。」

 そう言うと少年は剣を取り出した。

 その剣はどこに隠し持っていたんだ。

 セラも銃を再度忍ばせて剣を構える。