架空世界に咲かせる氷の花


 最悪の場合の事を考えてセラは顔をしかめた。

 「だから、深月君。」

 「犠牲になって」

 (やっぱり)

 ナイフを振り上げる柏木に無反応のケイ

 セラはケイが動かないことをわかっていた。

 ケイが言ったことが本当なら絶対ケイは避けない。

 (好きな人には尽くす。そういう人間だもの。)

 (でも、あなたの死はあなただけのものではないの。)

「悪いけどそうはさせないわ。」

 屋根から降りたセラは柏木を気絶させ壁にもたれさせる。

 ケイの前だからか彼女の割には丁寧にもたれさせた。

「……セラ」

「何。」

「俺は」

 何かを言いかけたケイをセラは思い切り睨む。

「柏木さんの為に死ぬなんて言わないでしょうね。」

 図星だったのか一瞬顔を歪ませる。

「それでも俺は」

「重いわ。」

 セラははっきりと言う。

「誰かを犠牲にして成り立つ人生なんてろくなものじゃないわ。人を殺めた傷は一生物なの。」

「そんなもの他人、ましてや好きな人に背負わせる物じゃないでしょう。」

「俺は彼奴をっ助けてやりたい」

 ケイが珍しく大きな声で怒鳴る。

 (…考え方は人それぞれ。だったわね。)

「…ごめんなさい。余計な事をしたわね。」

 そう言ってセラはケイに背中を向けて歩き出す。