帰って父さんに叱ってもらいな。

そう言って母は二千円俺に握らせて、
結局、タクシーで帰される。




親父は、

難しい顔で俺の言い分を聞いてから、


誰に迷惑かけ、誰を傷つけたのか、
もう一度、よく考えてみろ。

そう言って、

食器棚の上に飾られた、

淡いブルーのパジャマを着た
三歳の俺が六つの姉に馬乗りになった
写真立てに
チラリと目をやった後、

グラスを手にして、

『まぁでも、男になっていくんだな、
父さんの知らないウチに…』

もやりとアルコールが浮かぶ
グラスをズビっ、とすすって、

誰ともなく、ポツリと漏らした。


その時の父は、

少しだけ寂しそうで、俺は、

ゴメンなさい。

ゴメンなさい。


となぜか、二回謝った。