そして無事、
受験を終えて、

中学生活も、残り数日。


この道を昔リカと歩いたっけ…

そんな感傷に浸りながら
少し遠回りして帰っていると、

前を歩く
ウチの学校の制服を着た
カップル。


イシザキと、リカだ。


180センチ近くの長身のイシザキは、
隣の150センチ前後の
リカを見下ろして微笑み、

リカは、彼の顎の下から
潜り込む様に見上げ、
イタズラに笑っていた。


リカの笑顔を見たのは久しぶりだった。


あぁ、あの日のリカだ。

俺が好きだった、
子リスの様なその仕草。

その屈託ない笑顔…。


…くっ、イシザキ…

…ダメだ、

これは、あの笑顔は膝にくる。

もう、
立っているのも
やっとなぐらいだ。

言葉が出ない。
何も言えない。

言えないどころか、
俺は気配を殺し、

踵を返す事しか出来なかった。


踵を返し、独りになった後、

俺はただ、
イシザキを殴りたい、と思った。


一発でいい。殴って、
全部忘れよう。


今思うとなんて勝手なんだ。
本当に自分の事しか見えていない。

でも、
こんな身勝手な話に、
友人達は、よしわかった、
行ってこい!

と背中を押してくれた。

今で言えばストーカーだとしても
おかしくない。

でも、
誰から見ても真っ直ぐだった。

その想いはリカに届かなくても、
周囲の人間には響いていたらしい。


でも、一人だけ、
それでも反対してくれた。